この連載では、みなさんからフォーム・セミナーや、感想に寄せられたご質問に孫さんが回答していきます!今回の質問はこちらです。
Q 志望理由書を添削していると、将来やりたいことや学びたいことは書けているのに、「なぜこのテーマに興味を持ったのか」というきっかけや問題意識がどうしても浅い生徒がいます。どのように指導すれば、説得力のある動機に直せるでしょうか?
経験ではなく「違和感」を言語化させる
まず、きっかけが弱い生徒に対して、活動実績や出来事をさらに詳しく書かせても、基本的には文章は深まらないんですよね。
重要なのは、出来事の描写ではなく、「自分がそれまで当たり前だと思っていた前提が崩れた瞬間」を言語化させることです。
例えば、教育格差をテーマにしたい生徒がいたとします。
その子が、「学習支援ボランティアで困窮世帯の子どもに勉強を教えた」という事実だけを書いても、面接官には「よくある体験談」としか映りません。
そこで先生方に聞いていただきたいのは、「その現場で、自分が思っていたことと何が違ったの?」ということです。
例えば、「勉強を教えれば成績は伸びると思っていたが、そもそも夕食の準備や弟の世話で机に向かう時間すら確保できていなかった」という感想が出てきたら、、「自分の予想」と「現場の現実」のギャップに焦点を当てることができます。この違和感こそが、他の誰でもないその生徒固有の問題意識の出発点になります。
個人の違和感を「社会課題」につなげる
違和感を拾い上げたら、次にやるべきなのは、その違和感がなぜ生まれたのかを考えさせることです。ここを飛ばしてしまうと、単なる感想文や同情で終わってしまいます。
先ほどの学習支援の例であれば、生徒に以下のような問いを投げかけて深掘りさせます。
- 「本人のやる気や家庭環境だけの問題なのか?」
- 「自治体や学校のサポート体制にはどんな穴があるのか?」
- 「なぜ親がそこまで長時間労働を強いられているのか?」
ここをちゃんと調べさせる必要があります。
例えば、実際に文献や自治体の福祉施策を調べてみると、単なる学習の遅れではなく、親の就労形態やひとり親家庭への支援制度の周知不足といった構造的な課題が見えてくるかもしれません。
そうすると、最初は「勉強を教えてあげたい」という話だったものが、「なぜ勉強する時間すら確保できない家庭が生まれているのか」という社会課題に変わっていくわけですよね。
目の前で起きた個別の出来事を、社会のシステムや制度の問題につなげられるかどうか。
ここが、大学で学ぶ必要性を考えるうえで、非常に重要になってくると思います。
現場と先行研究のズレから「問い」を立てる
応用的な話をすると、先行研究や政策データと、自分が目にした現場の実態との「食い違い」を指摘させることも重要です。
例えば、「国や自治体の学習支援事業は年々予算が増加している」という公的データを調べさせたとします。でも、自分がボランティアで出会った子どもには、実際には支援が届いていなかった。
そうなった時に、「なんで制度としては支援が広がっているのに、現場では支援を受けられていない子がいるんだろう?」という疑問が出てくるはずなんですよ。
そこに仮説を立てさせ、
- オンライン学習支援は整備されたが、家庭環境的に通信端末や静かな個室がない
- 支援拠点が遠く、夜間に通うための交通費や安全な移動手段がない
などと思いつくかもしれません。
ここで重要なのはこのようなプロセスの中で、「政策として用意されている解決策」と「現場で起きている機能不全」の差分を見つけ出すことです。これができれば、「既存の制度では届かない層に対して、どのような支援アプローチが必要なのか」という、大学での探究に直結する具体的な「問い」に変わっていきます。
なので、生徒が現場で感じたことをそのまま文章にさせるのではなく、実際のデータや先行研究と照らし合わせて、何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかを考えさせることも大事だと思っています。
活動の限界を「大学で学ぶ理由」につなげる
最後に重要なのが、「なぜ高校生のボランティア活動の延長ではダメで、大学の専門的な学びが必要なのか」という限界点を言語化させることです。
多くの生徒は、「これからも子どもたちに寄り添って支援を続けたい」とボランティアの延長線上で志望理由を締めくくってしまい、大学側から「それは大学でなくても、NPOや現場で活動を続ければいいのでは?」と突っ込まれます。
なので、高校生として今できる活動の限界を理解したうえで、その限界を超えるために何を学ぶ必要があるのかを考えさせます。
- 「1対1で勉強を教えることには限界があり、孤立する家庭を早期に発見・支援する行政の仕組み自体を変えなければ根本解決にならない」
- だからこそ、個別の教育実践(教育学)だけでなく、社会保障や地方行政の制度設計(公共政策学・社会福祉学)を体系的に学ぶ必要がある。
このように、現場での「無力感」や「限界の認識」を学問分野の必要性と結びつけることで、動機から学びの必然性までが一本の強固なロジックでつながります。
経験の中にあった違和感を言語化させ、社会課題として捉え直し、大学で学ぶ必要性までつなげる。
この流れを意識して指導していただくことが大事だと思います。
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