4月21日、教育界に一石を投じる発表がありました。人気漫画『ドラゴン桜』(講談社、三田紀房 著)の冠を掲げた「一般財団法人ドラゴン桜財団」の設立です。

最大60万円の給付型支援金に加え、一流講師陣による学習支援プログラムを無償提供する同プロジェクトは、毎日新聞や朝日新聞など、瞬く間に多くのメディアで取り上げられました。

同財団の掲げる支援内容は、使途不問の給付型奨学金(30万円~60万円、学年により変動)および「リアルドラゴン桜プログラム」と銘打たれた学習支援プログラムの提供。

支援金は使途不問で学費以外の使用も許容されており、極論「何に使ってもよい」という型破りすぎる設定が話題を呼びました。また、学習支援プログラムも、駿台予備学校の宇野仙先生や西大和学園高校の辻考宗先生など、実力派講師陣の指導を受けられたり、現役東大生との座談会を開いたりと、非常にユニークかつ実践的。

私自身、これまで教育現場での調査および講演活動や取材を通じて「家庭環境が生み出す教育機会の格差」に向き合ってきました。現代の子どもたちの前には、複雑で高い“見えない壁”がそびえ立っています。ですが、今回の財団設立は、まさにその壁を打ち破るための強力な破城槌になりうる。

今回は、本メディア「未来図」の編集長であり、同財団の代表理事に就任した西岡壱誠氏に緊急インタビューを敢行。「なぜ今の学力を問わないのか?」「分断を生み出すものは何か?」など、記者会見では語りきれなかった、未来図読者のための独占メッセージをお届けします。

(聞き手・構成:未来図副編集長 布施川天馬)

なぜ今「財団」が必要なのか?

布施川:日本中の受験生に希望を与え、若さと挑戦の象徴となった国民的漫画『ドラゴン桜』。挑戦を後押しし続けるエンターテインメント作品として君臨し続けていましたが、この度は「第四の壁」を乗り越えて一般財団法人「ドラゴン桜財団」として現実の受験生支援に踏み切った。このタイミングで設立に至った原動力は何でしょうか?

西岡: 根底にあるのは、私自身の原体験です。私はかつて偏差値35を記録するほど成績が悪く、結果が出ない毎日を送っていた。中学生の時にはあまりの成績不良に三者面談を3時間も長引かせた挙句、「明日も来い」と言われてしまうほど。この話だけを聞けば、間違いなく誰もが「東大なんて絶対に無理」と断言するでしょう。

しかし、私は二年間の浪人を経て、東京大学に合格した。奇跡的に東大へ行けたのは、私が特別だったからではなく、単に「正しいやり方(情報と戦略)」に出会えたからです。ここにこそ、現代日本が抱える病理が見え隠れしている。

ドラゴン桜財団代表理事 西岡壱誠氏

今の日本を見渡すと、地方に住んでいたり、経済的な理由があったりして、その「やり方」にさえ辿り着けない子どもたちがたくさんいます。「やり方」がわかっていれば、もしくは「やり方」を知っていそうな先輩や大人が近くにいれば、チャレンジしたかもしれない子どもたちですら、「自分には無理だ」と検討すらしないままで、諦めさせられてしまう環境がある。

この社会問題は、「アンダーマッチング」と呼ばれます。本財団は決して挑戦を強要するわけではありませんが、「挑戦の機会」すらわかっていない子どもたちが多数存在することを危惧して生まれました。十分な才能がある子どもに「東大なんて無理だ」と思わせる空気を壊したかったんです。

「お金」だけでなく「プログラム」を提供する理由

布施川:今回の支援では、給付型奨学金が使途不問であったり、駿台予備学校の宇野仙先生や西大和学園高校の辻考宗先生など、実力派講師陣の指導を受けられたり、現役東大生との座談会を開いたりと、独自性が強いことが話題を呼びました。いったいどうしてここまで実践的な内容にしたのでしょうか?

西岡:はっきり言ってしまうと、「もうすぐ合格しそうな優秀な学生」だけにお金を配るのでは、本当の意味での教育格差の是正にはならないと考えています。

お金だけを渡しても、周囲にロールモデルがいなかったり、どう勉強していいか分からなければ、正しい投資は不可能。アンダーマッチングの当事者たちにこそ、「一流の思考法」や「リアルなロールモデル」に直接触れる機会を提供し、マインドと戦略の格差を埋める必要があります。だからこそ、資金とプログラムの両輪で伴走する形をとったのです。

ドラゴン桜財団理事 三田紀房氏

「学力不問」が見据えるゴール

布施川: 選考において「現時点の学力は問わず、意欲を重視する」と明言されています。財団運営を通して、最終的に子どもたちに何を届けたいと考えていますか?

西岡:ドラゴン桜的な視点で言うなら、学力とは「正しい方法で努力すれば、後から必ずついてくるもの」。今の成績が良いか悪いかは、大きな問題ではありません。

我々は大学受験支援を目標とする団体ですが、「大学合格」以上に届けたいのは、自ら未来を切り拓く『自信』そのもの。

スローガンに「すべての挑戦者に、機会を。」と掲げましたが、情報と戦略があれば、やる気一つでどこからでも最高峰を目指せる。その希望を実体験として持ってほしいんです。

なんなら、失敗してもいい。本気で高い目標に挑んだ経験そのものが、彼らの人生の強烈なエンジンになると考えています。

ドラゴン桜財団理事 佐渡島庸平氏

首都圏世帯にも潜む「見えない壁」

布施川: 最後に、未来図読者である親御さんたちへメッセージをお願いします。読者の多くは教育への関心が高く、世帯年収的にも比較的恵まれた環境にあると考えられます。財団が挑む「格差」というテーマは、一見すると対岸の火事のように思えるかもしれませんが、首都圏世帯にも関係がある話なのでしょうか。

西岡: 実は、教育格差は「地方か都心か」「年収が高いか低いか」だけの単純な問題ではありません。都心の恵まれた環境にいても、「正しい情報を取捨選択し、本人の『挑戦したい』と燃え上がれるか」は別の問題であり、マインドセットの時点で見えない壁にぶつかっているご家庭が非常に多いのです。

未来図読者の皆さんは、お子様を思うがゆえに、情報をたくさん集めて一生懸命に環境を整えようとされているでしょう。ただ、そこで親が先回りしてレールを敷きすぎてしまうと、子ども自身の「自ら学ぶ力(自学自習)」が育ちにくくなってしまいます。これも一つの「機会の喪失」と言えるかもしれません。

ドラゴン桜が伝えるメッセージの本質は、「自発的に目標を設定し、自分の頭で考えることの大切さ」。子どもの可能性に無意識に蓋をしているのは、実は大人の「これが正解だ」という常識かもしれません。どうかお子様の力を信じて、少しだけ引いた目線で、彼らの挑戦を見守り、応援する姿勢を持ってみてください。

全ての挑戦者にエールを。

西岡代表理事の言葉には、自身の経験に裏打ちされた強い熱量と、すべての子どもたちが持つ可能性への揺るぎない信頼がありました。

日本に根付いた教育格差問題は一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、大人世代が常識にとらわれず、子どもたちが自由に挑戦できる環境を一つずつ整えていくことで、未来は確実に変わるはず。

未来図としても、ドラゴン桜財団の今後の歩みを注視するとともに、読者の皆様がご家庭で実践できる「本当の教育機会の作り方」を引き続き発信してまいります。

奨学金の応募は2026年4月28日まで。財団ホームページ(https://dragonzakura-foundation.jp/)から応募できます。