近年、日本の教育とアメリカを中心とした欧米諸国の教育を比較するような、ネット記事や専門家の意見などをよく目にします。

 「日本の教育は詰め込み型で好奇心が育たない」

 「全員に平等なのはいいことだが個性が育たない」

 「日本の大学の大学ランキングは海外のものと比べると低い」

 などなど、教育業界に詳しい方であれば、日本の教育に関して様々な批判意見を耳にしたことがあるかと思います。

 実際、これらの意見に妥当性はあるのか? 日本の教育が本当にダメなのかはさておき、日本でも海外流の教育を受ける方法はあるのか? そう思われた方もいらっしゃるかと思います。

 実は日本にいながら海外の国際的基準に基づいた教育を受ける方法が一つ存在するのです!

 それが「IBコース」というものです。

 今回の記事では、IBなんて聞いたこともないよ…という方にもわかりやすく、IBのシステムや採用するメリット・デメリットをご紹介します。

 進路の選択肢が一つ広がるかもしれないと思いながら、読んでいただけますと幸いです。

そもそもIBとは何か?

 そもそもIBとは「International Baccalaureate」の略であり、国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムです。

 このIBですが、世界的に教育カリキュラムとして採用されており、このプログラムを修了しておけば、急に海外の大学を受験したいと発起したとしても大抵の場合受験資格が与えられます。

 特にイギリス系の学校ではほとんどがIBを採用していると言われています。

 近年においては、アジア圏など元々はIB入試の導入に積極的ではなかった国の中でも、欧米大学進学へのニーズが高まったことを背景にIB入試の導入が進んでいます。

 今回はIBの提供するカリキュラムのうち、日本でいう高校生用のプログラムであるDP(Diploma Programme)のシステムをご紹介します。

DPとは何か?

 DPは通常二年間の教育プログラムです。

 DPを終了するためには、6つの周辺科目、3つの必修科目の単位を取得する必要があります。

 生徒は以下の六つのグループから各科目1つずつ選択します。ただし芸術科目に関しては他のコース科目と代替可能です。

言語と文学(母国語)

…文学、言語と文学、文学と演劇

言語習得(外国語)

…言語B、古典言語、初級言語

個人と社会

…地理、歴史、経済、ビジネスと経営、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、デジタル社会、心理学、社会・文化人類学、グローバル政治、世界の宗教(SLのみ)、環境システムと社会

理科

…生物、化学、物理、コンピュータ科学、デザインテクノロジー、スポーツ・エクササイズ・健康科学、環境システムと社会

数学

…解析とアプローチ、応用と解釈

芸術

…音楽、美術、ダンス、フィルム、演劇、文学と演劇

 これらの周辺科目にはそれぞれHigh level とStandard levelが存在し、選択科目の3から4つをHigh Levelで取得する必要があります。海外の一流大学の入学条件には何科目以上をHigh Levelで取得したか、そしてその成績に下限を設けている大学も多くあるため、コースの科目選択は非常に慎重に行う必要があります。

 赤文字で示されている科目は日本のIB導入学校において日本語で受講可能な科目です。

 これらがメインの科目ですが、これらに加えて以下の三つの必修科目を受講する必要があります。

Extended Essay (EE) 課題論文

Theory of Knowledge (TOK) 知の理論

Creativity, Action, Service (CAS) 創造・活動・奉仕

 これらは探求型の教育科目で三つ目に関して言えば課外活動的なものと言えます。

 六つの周辺科目は各7点、三つの必修科目は各1点で採点され、45点満点で採点されます。

 そして、海外の超一流大学に進学したい場合は「43点」、日本の一流大学であれば「40点」ラインが目標となります。

 各科目の成績評価は内部評価と外部評価によって決定されます。外部評価は一年に一度受験できる試験で、ペーパーテストやエッセイ課題があります。内部評価は原則科目担任の先生によって行われ、プレゼンや口頭での質疑応答などがあります。

 各科目の難易度ですが、数学などは日本の大学受験のものと比べるとかなりシンプルに感じます。一方、社会系の科目、特に歴史などは正直どのように解けばいいか見当もつきませんでした。それ用に勉強した人であれば解法が思いつくのだと思います。

補足:ちなみに、過去問はこちらの公式サイトから閲覧することができます。

https://www.ibo.org/programmes/diploma-programme/assessment-and-exams/sample-exam-papers/

IBを受講するためには?

 さて、ここまででIBの概要についてはわかっていただけたかと思います。それではそもそもこのIBを日本で受講するためにはどうすればいいのでしょうか?

 結論としては、まず政府の認定する高校に入学する必要があります。現在、日本にはIBを受講できる認定校として83校が存在しています。

「大学入試における国際バカロレアの活用について」より引用(リンク)

これらの認定高校ではIBを受講することができます。ただし、学校ごとに取得できる科目が異なっていることには注意が必要です。

 日本の認定高校の場合、理系科目は物理、化学、生物、文系科目は歴史、地理、経済のいずれかの場合が非常に多いです。

 また、学費も通常の私立と比べて比較的高い傾向にあることもデメリットと言えるでしょう。

 高校入学の条件ですが、どれも超難関高校として分類されるような高校は少ない印象です。入学自体へのハードルはあまり高くありません。

大学受験における戦略とは?

 こちらのIBですが、近年ではIBを修了した学生に向けた受験形式も増加しています。

 一般的にこれは「IB入試」と言われており、推薦入試の一つと言えます。現在、日本では以下の62大学においてIB入試が採択されています。

 「大学入試における国際バカロレアの活用について」より引用

 https://www.mext.go.jp/content/20201209-mxt_daigakuc02-100014554_30.pdf

 特に筑波大学や国際基督教大学(ICU)などはIB入試の枠が多く、採用に積極的だと言えます。

 これらのIB入試は基本的に通常のAO入試とあまり変わりがありません。面接や小論文とともにIBのスコアを提出し、合否が決まるという流れになっています。

 少し特殊な点としてはTOEFL ibtやIELTSのスコアを提出しなければならない大学が多いということです。

 総じて考えると、IBのスコアで高得点を取りつつ、面接や小論文の対策をしなければならないので、一般の受験生と比べて楽かというと必ずしもそうとは言えません。

 むしろ英語で科目を受験しなければいけないことなどを考えると、普通の高校生にとっては負担が大きいものとなるかもしれません。

 受験の戦略として多くの学校に出願することができ、海外大学受験を視野に入れることができることは魅力的かもしれませんが、日本の大学を受験することを決めている学生にとてコスパの観点で言うとあまり良くないのかもしれません。

 しかし、例えば学校の授業や課題に真面目に取り組みつつ、探究心を伸ばしながら学問に取り組める学生はIB向きと言えるでしょう。

 一方で、暗記に長けていたり、数学などの問題を解くのが得意な生徒にとっては一般受験に合格する方が楽かもしれません。

まとめ

 ここまで様々ご紹介したIBですが、国際的に認められ、どこに行っても通用する学びという観点ではとても高く評価されています。

 IBプログラムは、受講するには学費が高く、日本の大学受験においては大きなアドバンテージはあまりないというデメリットはありつつも、子供の探究心を伸ばし、国際的な人間像を育てることのできるプログラムだと言えます。

 現在日本の教育に賛否両論が別れる中、海外の教育に身を置いてみるのも、日本の中で際立つ存在となるには一つの手段かもしれません。