私が早稲田大学を受験したのは2016年。今からちょうど10年前になる。

大学時代から今まで、受験界隈の動きを観測してきたが、この10年で大きくその流れは変化した。
それは間違いなく2006-2016年の10年間よりも大きなものであった。

そしてその流れはこれからも加速していくことはほぼ間違いなく、親世代の受験の常識どころか、兄姉世代の受験の常識が弟妹世代で通用しない、といったことも十分考えられるだろう。

なのであれば、今中学生のお子さんを持つ家庭であれば数年後の大学入試をハックできるように戦略を立てて行く必要がある。

そこで今回は、今から4年後に当たる2030年(4年後)の大学入試を攻略するためにどのような戦術をとるべきなのかについて、考えていきたいと思う。

「大前提」となる今の大学受験の潮流

未来を見据えるのであれば、今の状況は確実に把握しなければならない。

過去の記事でも複数回言及している内容と重なる部分もあるが、改めてこの数年での大学受験の潮流を、今一度確認しておこう。

近年、大学入試は「一般受験偏重」から「総合型選抜(旧AO)・学校推薦型選抜」へと、静かに、しかし確実に重心が移っている。

実際、文部科学省の調査でも、総合型選抜の入学者割合は増加を続け、2024年度は全体で16.1%に達し、前年差でも伸びている。

さらに総合型+学校推薦型を合わせた比率が5割を超えるというデータもあり、「例外」ではなく「主戦場」になりつつあるのが現実だ。
私が受験をしていた頃から考えると、にわかに信じがたい割合に到達している。

この潮流を象徴する例として、東北大学と早稲田大学を挙げたい。

東北大学は国立大では珍しく早期からAO入試を導入し、募集人員の約3割を総合型で確保する目標を掲げ、実際に入学定員に対するAO募集比率は非常に高い。

早稲田大学も、学部横断で総合型選抜の制度群を整備し、書類・筆記・面接などを組み合わせて能力を総合評価する枠組みを明確にしている。
将来的に半分以上をなんらかの推薦型入試で募集する方針を打ち出したのは記憶に新しいだろう。

こういった流れの背景にあるのは「求められる資質の変化」だろう。

知識量や処理速度だけならAIで容易に代替可能となり、AIが東大理三にも合格する時代が到来した。ビジネスの世界でのゲームチェンジが起きるのと同様に、大学入試でもゲームチェンジが起きたと考えるべきだ。

大学側は、探究心、課題設定力、言語化力、協働性、そして学びを社会へ接続する意欲といった、ペーパーテスト単発では測りにくい能力を見にいく方向へ舵を切っている、という理解が自然だろう。

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「ハック」するために必要な設計とは

上述したような潮流が強まる中で、2030年受験生たちは何を「ハック」すべきか。

結論から言えば、総合型選抜を“裏技”として捉える発想そのものを捨て、「学力×探究×発信」を最初から一体として設計することだろう。

オプションとしての選択肢ではなく、端から攻略しにかかることが重要だ。

近年の総合型選抜は、課外活動や実績があれば勝てるほど単純ではないし、逆に学力が高ければ良いという話でもない。
逆に言うと、どちらかに完全にリソースを振った動き方では、行き当たりばったりになってしまうということだ。

そのためには、複数の取り組みを同時に、早期に初めておき、いざ受験生になったタイミングでの対応できる選択肢を多く残しておくことが必須といって良い。

まず総合型選抜において求められる能力、言い換えれば大学が見ているのは「再現性」である。

テーマに向き合い、何を調べ、どんな仮説を立て、どう検証し、どのように改善したかというプロセスの筋の良さだ。

2030年に向けた戦術の第一歩は、志望分野に直結する問いや探究活動を「成果物が残る形」に落とし込むことである。

研究ノート、実験記録、アンケート設計、統計処理、フィールドワークのログ、発表スライド、ポスター、外部コンテストの提出物――こうした証拠が積み上がるほど、書類審査や面接の戦場で強い。総合型選抜は、提出物の厚みがそのまま防御力になる。

また、こうした取り組みの中で、「ロジックを組む」という作業の経験値を積むことは、実際に総合型選抜の書類審査や口頭面接などで問われる能力との親和性も高く、良いトレーニングになるだろう。

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 ただし、「総合型=学力不要」ではない。
現実には、総合型選抜でも学力評価は残り続ける。

一部国立大の総合型入試には共通テストを課すことも多く、共通テストを課さない枠でも筆記試験が必須であることは多い。
もっと言うと、今後は学力と課外活動の両方を評価するような「良いとこどり」の入試に最適化されていく可能性も高い。

また、私大であっても選択肢を多くの残したいのであれば英語4技能を含む資格試験の受検も重要だ。

一般入試であっても英検2級レベルはマストになることも多く、多くの大学・学部の総合型・学校推薦型選抜で活用されている。

例えば最もポピュラーな英語の試験である「英検」であっても近年では従来の級の合否に加えて、結果をスコアで表示する「英検CSEスコア」も導入。

英語4技能別(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)のスコアと、トータルスコアが表示され、このスコアを出願条件に設定している大学も多く存在するのだ。

つまり2030年の勝ち筋は、探究と並行して「英語4技能」と「一般入試の基礎学力」を落とさないことにある。

英語は読む・聞くに偏った学習では足りず、書く・話すまで含めた運用能力として鍛える必要がある。

総合型の面接や口頭試問では、結局のところ言語化の体力がものを言う。小論文も同様で、文章は才能ではなく訓練の産物である。
週1本の要約、月2本の論説、四半期ごとの長文レポートというように、培った経験が物をいう。

ここまでを踏まえると、2030年の「ハック」は戦術というより、時間配分と言ってもいいかもしれない。

僕の時代の一般受験では「高2の終わりくらいから受験モードに入り、高3夏から過去問→秋に完成→本番」という道筋が王道だったが、総合型が主戦場になるほど、その一本道は危うい。

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年内型の出願・選考が広がれば、勝負のタイミングがどんどん早まって行く。

だからこそ、

①早い段階から基礎学力の土台の養成。

②高1段階から探究、外部発表などの経験を多く積む

③高3春〜夏でこれまでの活動を形にし、同時に共通テスト/一般の得点力を引き上げる

という言わばリャンメン待ちの戦略が合理的である。

総合型の準備にリソースを奪われ学力が崩れると、併願戦略が瓦解する。
2026年には推薦にも一般にも対応できなかった「どっちつかずの」受験生が大量に浪人することになり、一部の予備校がパンクした。

逆に学力だけを積んで探究が薄いと、総合型では「素材がない」状態になる。
二兎を追うのではない。最初から二輪駆動で設計するのだ。

最後に、2030年を見据えた受験生・保護者が腹を括るべき点を言い切っておく。総合型選抜の拡大は、努力の方向性を変えるが、努力そのものを不要にするわけではない。

上の世代ほど学力から逃げた人たちの逃げ道と捉えがちだが、むしろ要求は増える。学力の下地があり、その上に探究の実体があり、さらにそれを言語化して他者に伝える表現がある者がこれからの総合型市場では強い。

大学が欲しているのは、入学後に伸びる学びのエンジンを持つ学生であり、制度の穴を探すことで攻略するのはもう限界に近づきつつある。

評価軸そのものが変わった世界で、評価される経験をいかに早めから考えて蓄積できるかが大きく結果に影響するだろう。