コンクリートを極めたら東大への道ができていた。

今回お話をお伺いしたのは東京大学の工学部に推薦入試で合格された塚本剛永さんです。

塚本さんは中高と所属していた科学部で本格的にコンクリートに関する実験を進め、その実績をもとに見事、推薦入試に合格されました。

現在は物性理論について学びたいと仰っている塚本さんですが、その学問へのバイタリティーがどのように生まれたのか?そして普通の中高生がどのようにしてコンクリートに興味を持つに至ったのか?

今回の記事では、塚本さんの学問への姿勢、そしてそのルーツをお伺いしました。

インタビューアー:早速ですが、中学生の頃、一体どうしてコンクリートの研究をやろうと思ったのですか?


塚本さん:実は私の研究の根本のルーツは、高校の先輩なんです。この高校の先輩はかなりすごい方で、科学部の中でも特に熱意や知識量が多く、尊敬していました。その先輩がいずれ卒業していくと考えたとき、先輩の研究をそこで終わらせてはいけないと思い、僕が研究を引き継ぎました。

先輩が研究していたのは、「温度応答性保水材料」という素材です。僕はそれを引き継いで、コンクリートへの応用を進めたという形になります。

実験と改良の連続。高校生なりの「打ち水」革命

温度応答性保水材料とは、簡単にいうと温度変化によって保水能(水を保持する能力)が変化する材料という性質を持った材料です。

この温度応答性保水材料をコンクリートに混ぜ込むことができれば、例えば雨が降った時に水を一時的にためておいて、その後晴れてコンクリートの温度が上がると材料が疎水性に変化し、溜め込んだ水分を空気中に放出することが可能となります。

これにより、気化熱によって路面温度を低下させる「打ち水」のような効果が期待できるという寸法です。

インタビュアー:実現することができれば革命的ですね! ちなみに、実際に実用化まではいけたのでしょうか?

塚本さん:流石に高校生の研究だったので、実用化までは行かなかったです(笑)。

この保水材を混ぜてしまうと、どうしてもゲル状の高分子を含むことによってコンクリートが脆くなってしまって、僕はその保水性と強度とのバランスを取るための実験をずっと続けていました。

基本的には、仮説を立てて、それを実験して、というトライアンドエラーを何度も繰り返しながら、徐々に強度をあげていこうと研究を進めていきました。

大学教授・企業にも自ら連絡。研究を支えた行動力

インタビュアー:実験というと設備等が必要そうですが、そのあたりはどうされていたのですか?

塚本さん:科学部自体が、簡単な薬品程度であればすぐに注文が通るくらい制限の緩い環境でした(笑)。当時は特にお金の出所もよくわからないまま、必要なものを注文していましたね。

とはいえ、計測に専門的な機械が必要なこともあったので、そういう時は高校の先生と協力して大学にアポイントメントを取り、お借りしたりしていました。僕らみたいな高校生でも、真剣にメールを送れば意外と大学教授の方も返信してくださったりするんですよね。

機械をお借りして計測している時に、教授の方にアドバイスをもらうこともありました。

あとは企業の方にもメールを送って、実際に話を伺ったりすることもありましたね。

インタビュアー:凄まじい行動力ですね。高校の先生も研究に協力的だったということでしょうか?

塚本さん:そうですね、その科学部の顧問の先生方が専門的な点についてもアドバイスしてくださり、推薦入試も含めてご助力いただきました。その先生の勧めで化学グランプリを受けたり、学内で発表をしたりしていましたね。結果、それが推薦入試の時のアピールになっていたかなと思います。

例えば、総合文化祭というコンテストの化学部門で発表をして最優秀賞をいただいたことなどがアピールになりました。この総合文化祭には、高校一年と高校二年の時に出場しました。

あとは、学校の行事で全校生徒の前で急に英語で研究発表をするよう言われた時がありましたね。英語が苦手だったので四苦八苦しながらなんとか発表したのを今でも覚えています。

「文系少年」が科学に目覚めたきっかけ

インタビュアー:とても意欲的に活動されていたのですね!どうしてそこまで化学に熱中されたのですか? 子供時代などを振り返って学問へのルーツを教えていただきたいです。

塚本さん:実は中学入学のタイミングでは歴史学者になりたいと思うくらい文系少年だったんです。小説や戦国武将が好きで完全にそっち方面に進むと思っていました。特に東大の本郷和人教授が好きで、憧れでした。

別に理系分野が天才的にできたという感じでもなかったです。好きなことといえばビー玉を転がすことで、普通の少年だったと思います。

塾に通い始めたのも小六とかからでした。当然勉強ができない方でもなかったですが、問題を解くのが好きという程度でしたね。

中学三年生の時に、コロナ禍で暇だったので青チャートを解いていたら数学にハマってしまい、その流れで科学に熱を注ぐようになりました。科学部にも入り、先ほど述べた先生の協力もあって、のびのびと科学を勉強していました。

親も知識欲に対しては付き合ってくれるタイプで、昔から科学館や博物館などに連れて行ってくれたことも、今思えば影響しているかもしれません。

化学から物理へ。進路選択の理由と面接での工夫

インタビュアー:なるほど。ところで、高校では”化学”を主軸に勉強されていたということですが、どうして”物理”を専攻したいと思われているのでしょうか?

塚本さん:この質問は大学の面接でもたくさん聞かれました。

研究していた内容や化学グランプリという実績と、希望する進路がマッチしてないんじゃないかと。

僕が物理学に進もうとしている理由としては、高校の時に研究していた高分子などの物性に関して、理論的につきつめて理解しようとすると物理学の知識が必要になるからというのが一番です。

今は特定のやりたい分野は決まってないのですが、物性理論を学びたいと漠然と思っています。

インタビュアー:やはり大学の面接でもそういったことが聞かれるんですね。他にはどんな質問をされましたか?

塚本さん:答えに困ってしまうような変化球はあまりこなかった印象です。オーソドックスというか、いかにも推薦入試らしい質問が来たと記憶しています。

私の場合は、最初の15分程度が自分の研究に関する発表で、その後にその研究に関する質疑応答、最後に志望理由や将来設計などが聞かれるといった具合でした。

一つ覚えているのは、「それはどういう物理現象に基づいているんですか?」という質問がありました。

これに関しては、聞かれている内容は高校レベルからプラスαくらいの内容で、教授の求めている回答も想像できていたので対応できました。

基本、質問内容は超専門的なものではないので、ある程度自分の研究分野に精通していれば対応可能だと思います。

ただ、今思えば、高校時代の発表の経験も推薦入試対策になっていたかもしれないですね。当然緊張はしましたが、慣れていた分なんとか対策できていたような気がします。

インタビューアー:面接の対策等はどうされていましたか?準備期間中の当時の心境などお聞きしたいです。

塚本さん:面接の対策は、学校の先生方に協力していていただきました。

学校が持っているデータに、推薦入試生が実際に受けた質問リストがあり、先生がそこから質問を出してくださいました。

推薦入試に挑む後輩へ。必要なのは“成績”より“熱意”

インタビューアー:推薦入試に挑むと決めたとき、不安はありませんでしたか?

塚本さん:心境的にはもちろん、不安はありました。やはり他の東大を受ける生徒が一般受験の勉強をしている時間に、僕は面接の対策などをしていたので。

成績はそこそこ取れてはいたのですが、それでも焦りや不安はどうしても募りました。

インタビューアー:塚本さんのような方でも不安になるんですね。最後に何か推薦入試を受ける生徒さんへアドバイスをいただけたら嬉しいです。

アドバイスとしては、好きなことについて熱意をもって語れるようにしておくことですね。

推薦入試に合格した他の学生を見ていると、〇〇グランプリとか〇〇オリンピックとかで必ずしも優秀な成績を収めている必要はないなと思います。とにかくみなさん面白い方で、行動力が強く、自分の興味分野をしっかりと探求しています。

評価されるためには、行動を起こすことが一番だと思います!