「大学全入時代」と呼ばれる昨今。少子化の影響による相対的な枠の増加や、推薦・総合型選抜など入試方式の多様化などにより、大学に入りやすくなった現代ですが、それでも「医学部受験」だけはかつての難易度を失っていません。

 中でも、東大の医学部直通コースである「東大理Ⅲ」はさらに異次元の難易度を誇ります。毎年100名余りしか合格者が出ない日本の大学受験の最高峰。合格者はその年の受験生の上から100人とほぼ一致するでしょう。

 そんな理Ⅲに合格するのは、やはり都心の子どもたちが多い。東京都渋谷区代々木に本拠地を構える東大専門予備校「鉄緑会」からは、毎年合格者数の5~6割を占める数字が合格実績として発表されます。

やはり都会にあって進学塾と強固に結びついている中高一貫私立校が強い。こればかりは否定できません。

 ただ、絶対に塾が必要なわけでもない。なんと、今年北海道のある私立高校から理Ⅲ合格者が2名も輩出されたのです。しかも、両名共に塾なしで合格している。いったい、どのようにして「奇跡」を起こしたのでしょうか?

 そこで、札幌郊外に位置する寮を備えた私立中高一貫校「北嶺中・高等学校」の副校長・郷頭竜也先生に突撃取材を敢行。実際に校内を見学してわかった「医学部現役合格率日本トップ高校の秘密」に迫ります。

「医学部一辺倒」ではない

__この度は、東京大学理科Ⅲ類に2名の合格者を輩出されたとのこと、誠におめでとうございます。医学部現役合格率が全国トップクラスの貴校ですが、やはり非常に厳しい指導体制を敷かれているのでしょうか?

郷頭:確かに、本校の特徴である「6年間完全中高一貫の寮生活」などは、見方によってはかなり厳しい印象を与えてしまうかもしれませんね(笑)。

ただ、私たちとしては、そもそも「絶対に医学部に受かれ!」なんて伝えているつもりはありません。むしろ、「医学部以外でも先進的な研究ができる学部・大学はたくさんありますから、もっと広く目を向けてみてもいいのでは」とすら考えている。

とはいえ、モデルケースとして医学部進学の先輩が多いことや、学校として現役医師や医学部教授の先生や著名人をお招きして講演会を行うなど、とにかく「医業」を身近に感じやすい環境なのは確か。お招きする現役医師の先生も、実は本校卒業生……なんてことも珍しくありません。

LINEヤフー株式会社宮澤氏による特別講演(学校提供)
橋下徹氏による特別講演会(学校提供)

最近だと、卒業生のお子さんが入学してくることもあり、階段に飾られた卒業写真を見て「あ!お父さんだ!」と驚きの声を上げることも。

”監獄”ではなく”天国”のような寮生活

__OBとの結びつきが非常に深いのですね! 医者として活躍されている現役世代の方々が十数年かそれ以上も愛校心を持ち続けるほど、充実した環境なのでしょうか?

郷頭:「6年間寮暮らしだと閉鎖的」なんてマイナスイメージがつかないように、とにかく楽しく遊べて、学びを深められる文武両道を体現した寮生活を体験できるよう、様々な工夫を凝らしています。

裏山にはバギーコースがあって、春夏はバギーの運転を、秋冬にはスノーモービルがあるので、雪の中を駆け巡って遊びますし、敷地が広いこともあってドローンを飛ばして遊ぶこともあります。

青雲寮野外ジンギスカンパーティーの様子(学校提供)

寮内には展望風呂が設置されていて眺めも抜群ですし、設置された専用サウナも使えます。サウナから飛び出して、積もった雪にダイブする様子が青雲寮の冬の風物詩になっています(笑)。

眺望抜群のお風呂(筆者撮影)

他にも、大スクリーンを使って映画の上映会をするとか、体育館やグラウンドを開放していつでも使えるようにするとかはもちろんのこと、毎月誕生日の子たちを集めて誕生会も開きますし、年に数回のジンギスカンパーティー、新入生歓迎のボーリングパーティーに、遊園地に行ったりさっぽろ雪まつりに行ったり、スキー実習をしたり……マグロを1匹まるまる買い上げて、寮の食堂に業者を招いてマグロ解体ショーを開いたこともありました。

青雲寮マグロ解体ショーの様子(学校提供)

青雲寮ボウリングパーティー(学校提供)

寮暮らしの様子は、保護者専用のウェブサイト「青雲寮ブログ」にて毎日写真付きで配信しています。寮内には看護資格を持った養護教諭が2名常駐しており、体調不良者が出てもすぐに学校側で対応できる姿勢が整っていますし、寮医さんも不定期できます。

寮の食事はもちろん栄養バランスを考えており、アレルギー管理もバッチリ。毎月メニューアンケートを取っていて、美味しくないものはすぐに業者へ注文して取り変えてもらいます。

遊んでばかりではなく、学習面もサポートしており、札幌医科大学や北大医学部医学科などへ進学したOBが夜間学習を見てくれます。寮教諭や学校の先生方による夜間講習もありますし、勉強に遊びに、全てを楽しめる体制が整っていると自負しています。

ご自身が卒業生だからこそ、寮暮らしの様子もわかりますし、しっかり勉強を教えつつ、面倒を見てもらえると信頼していただけているのでしょう。

学校見学で優遇措置も

__私自身が入学したくなるほど魅力的な寮生活ですね(笑)。だからこそ、学校見学を強く推奨されているのでしょうか?

郷頭:仰る通り、本校は受験を考えていらっしゃるご家庭に対して、学校見学を強く推奨しております。見学に来ていただければ絶対に好きになってもらえる自信がありますし、6年間一貫生活を送る場所ですから、しっかり選んでいただきたいためです。

学校見学者だけのメリットも存在します。入試で優遇措置が受けられるのです。

本校の入試は専願・併願A・併願Bの3種類に分かれます。先ほど述べた順番に志望度が高いとみなしており、専願や併願Aは、併願B区分よりも入学審査の際に優遇措置が受けられる。

それなら、みんな専願や併願Aで受験したい……となるかもしれませんが、東京・大阪・名古屋の受験会場では受験方式を基本選べません。第一志望校の肩慣らしで受験される方が多く、志望度が低い方も多く混じっていらっしゃるからですね。

ですが、道外にも志望度が高い方はいらっしゃいます。そこで、学校と寮を見学された受験生には「見学証明書」を発行しています。これを出願時に提出いただければ、東京・大阪・名古屋会場からでも専願や併願A区分で受験できるようになるのです。

見学証明書 見本(学校提供)

受験倍率が非常に高いといわれますが、専願や併願A区分の倍率は2~3倍程度。併願Bとは比べ物にならないほど優遇措置が受けられるので、もし少しでも本校への進学を考えていらっしゃるならば、ぜひ見学をお勧めしています。

「めざすなら高い嶺」

__この度は理Ⅲ合格者2名を筆頭に様々な医学部へ卒業生が羽ばたかれました。毎年医学部現役合格率トップをたたき出されているのは、やはり学業面での優秀層を全国から取っていることも大きいのでしょうか?

郷頭:もちろん、聖光学院や麻布など名門校の合格を蹴って本校に入学してくれるような方もいらっしゃいます。ただ、都会の優秀者だけではなく、北海道内も含めた全国的に優秀な子を募集しているのが本音。

実際に、道外から来られる方ばかりが優秀層に名を連ねるわけではありません。理Ⅲに現役で3名が合格した際のそれぞれの出身地は、札幌・富良野・八雲でした。北海道の地方の子どもたちの伸びしろや柔軟性は大事にしたい。一方で、道内に絞らず全国の可能性を広く見据えたい。だからこそ、通学コースと寮コースが併存しています。

そして、本校の目指すところは、「ガリ勉」ではなく総合的に優れた人物の養成にこそあります。

本校の学習目標は「めざすなら高い嶺」。医学部はもちろん、東京大学など難関大学をまずは目指してほしい。そのためには、学習に向き合う努力はもちろんのこと、人間として総合的な体力の醸成が不可欠です。

柔道とラグビー、登山が必修としてカリキュラムに組まれていますが、これもまた体力や精神力を養ってほしいがため。柔道は個人としての戦い、ラグビーはチームでの戦いを学んでもらい、年に一度の登山プログラムでは自分自身との戦いに挑んでもらいます。

柔道大会の様子(学校提供)

人間的な深みを作って、自分自身の興味関心の形や方向性を知り、その探究で見えてきた光に従って進学先を決めてもらう。その際、学力的に不足しないよう、まずは「高い嶺」を目指してほしい。

志望が決まるまでは理Ⅲレベルの力を身に着けることを目標にすれば、志望校が決まってから焦る必要もありませんから。

ラグビー試合の様子(学校提供)

全校登山の様子(学校提供)

実際に、今年の卒業生も理Ⅲを視野に入れつつ努力していくうちに進学先が具体化されていき、北大や東北大、筑波大学の医学部医学科へ進学を決めました。妥協せず、高いところを目指したからこそ、得られる結果があるのではと感じます。

賢く環境を使って

__やはり、寮生活に関するご質問が多いのかと察しますが、進学結果としても通学生より寮生の方が傾向として優秀なのでしょうか?

郷頭:青雲寮コースの方が入学点数を高く設定されているのは事実ですが、一昔前までは通学生の方が成績的には良好でした。最近は寮生のほうが追い付いてきましたが、それでも現高1・中3のトップは両者とも地元の通学生です。

一方で、本校から出た理Ⅲ合格者2名は両者とも青雲寮生であり、2つのコース間で実力が大きく乖離している認識はありません。東大入試まで十分に対応可能なレベルの授業を展開していますので、通学生でもしっかり復習をしてくれれば、受験対策は足ります。

通学でも寮でも環境が異なるだけで、やるべきことは変わりません。たしかに、寮生は通学時間がゼロで済みますし、放課後講習や直前期の講習、演習や添削の機会も通学生より多くとれることがメリット。

とはいえ、その環境を使いこなせなければ、通学時間を無駄遣いしない通学生に負けることもあるでしょう。用意された環境に対してどのように順応し、使いこなせるかが重要です。だからこそ本校を志望されるのであれば寮生活の雰囲気や実際を知りに来てほしいと強く感じます。

毎日、学校ホームページに見学のための公開日を記載しております。10時から昼頃までは校長が直接案内して、寮で昼食を取っていただき、後半は寮監長が案内するスケジュールとなります。

夏休み中も見学日程は充実(学校公式HPより。2026年7月10日閲覧。リンククリックで公式HPへ)

土日は混雑しますので、仕事や学校の兼ね合いもありますが、平日がおすすめです。空いているので校長と直接話しながら学校を巡れますし、授業や部活動の様子も見られる。東京からでも朝の飛行機に乗れば日帰りで見学可能です。

あとは、8月20日以降は本校の夏休み明けとなりますが、一般的には夏休み中の方も多いでしょうから、そのタイミングだと来やすいかもしれません。とにかく、少しでも気になられたならば、ぜひ一度お越しいただければと考えています。

自分に合った環境の学びを

共学化が進み、男女別学がどんどん消滅している中、「6年間一貫した寮生活を送る男子校」の存在は、独特な環境に映るかもしれません。

しかし、実際には共学の環境があっている方、別学の環境があっている方など様々な方がいるはずであり、本当に多様性を掲げるのであれば、「寮生活・男女別学」もまた、一つの在り方として誰かにとっての120点の環境になり得る。

そして、その環境に順応できた方々の多くが、素晴らしい進学実績をたたき出しつつ、社会に羽ばたいて活躍している。これは揺るがしようのない事実です。

実際に東京から札幌まで出張して見学した感想を述べるならば「自分が小学校6年だったら、絶対ここに行く!と駄々をこねていただろう」と容易く想像できるほど素晴らしい環境でした。

煌びやかでどこかミステリアスな図書館、開放的で清潔な寮、美味しい食事……どれをとっても「この瞬間しか体験できないモノ」に溢れていた。

美しく幻想的な図書館(筆者撮影)
調度品も味がある(筆者撮影)

都会でしか得られない情報や体験は、確かに数多くあります。一方で、都会では絶対に得られない事物も、また多くある。北嶺中・高等学校での生活は、後者にあたるように感じられます。

“札幌郊外のホグワーツのような学校での寮生活”——このフレーズに興味を持たれた方は、ぜひ一度見学に行かれてはいかがでしょうか。