1.「過去問9回分+AI採点」──サービスの設計思想

――まず、改めて『英検カコモン』というサービスの概要を教えてください。

A ありがとうございます。大きく4つのポイントでご紹介していますが、最初に押さえていただきたいのは、過去問9回分がすべてスマートフォンで解けるという点です。加えて、リニューアル形式に対する予想問題が2回分ついていますので、合計11回分。英検S-CBTの対策としても、十分な分量が揃っていると思います。

2つ目が、ライティングAI採点です。継続的に取らせていただいているアンケートでも、満足度は9割を超えており、最高で95%の評価をいただいています(※2)。一般的な生成AIで質問するのとは違い、旺文社が長年積み重ねてきた研究と解答データの分析をベースに、間違えやすいポイントを的確に指摘できるよう設計しているのが特徴です。

3つ目が、出る順・難易度順・誤答での表示切り替えです。過去問はデフォルトでは「年度ごとの順番」で並んでいますが、それを学習者の都合に合わせて並び替えられる。ブックマークを付けた問題や、間違えた問題だけ集めて解き直す、といった使い方も可能です。

4つ目が、二次試験対策です。一次試験対策のついでに二次試験まで一気通貫で取り組める。とはいえ、「いきなり1時間以上かけて試験1回分を解くのはは気が重い」という方のために、「今日の一問」として一次試験の問題から一問だけ取り組める導線も用意しました。学習記録はグラフとして可視化されるので、モチベーション維持にもつながるはずです。

PC・タブレット・スマートフォンに対応し、技能ごとの解答のコツ・ノウハウなども含めて、学習者を多面的に支える設計になっています。

孫辰洋 まず率直に、素晴らしいサービスだなと思いました。指導現場で高校の先生方とお話していて常々感じるのは、学校の英語成績は良くても、英検対策となるとほぼ全員ライティングで詰まるということです。「過去問は本でいいでしょう」ではなく、わざわざ課金して『英検カコモン』を使う価値があるとすれば、その中心はやはりライティングのAI採点だと思います。

ただ、そうなると一つだけ気になっていることがありまして。ライティングをいきなり書ける子は、そんなに多くないのではないか、ということです。

 

2.「いきなりライティングを書ける子は、そんなに多くない」という現実

孫辰洋 たとえば、2級対策をしている子が、リーディングやリスニングはそれなりにこなせる。けれど2級のライティングになった途端、一度ほぼ全員が"壁"にぶつかるわけです。ここで何の足場もなくAI採点に書いて投げ込むのは、初学者にとってかなりハードルが高いのではないかと思っていまして。日本のパブリック教育では、そもそもライティングをほとんどやらないので、初学者の入り口設計はどうお考えなのか、お伺いしたいです。

A ご指摘の通りだと思います。本当にライティングが初めてという子に対しては、「意見を述べる定型表現を覚えるところから始めましょう」「接続詞の使い方や構成の型を分けて学びましょう」と、部分から積み上げる方が丁寧です。定型表現の練習や接続詞の使い方など、ライティングの部分的な練習は現状の『英検カコモン』では補いきれない部分でもあります。ですから、AI採点の初回は、「規定の語数に届いていなくても、内容が薄くても、まずは出してみてください」とお伝えしています。リリース当初は、少しでも語数が足りていないとAI採点に進めない設計だったんですね。すると、書ききれずに離脱してしまうユーザーが一定数いることが分かりました。そこで、7割ほど書けていれば採点し、語数不足であることと、では改善するためにはどのように書けばよいのかがわかるアドバイスを採点結果画面でフィードバックするように改修したところ、2回目・3回目と挑戦してくれる子が明らかに増えました。

また、『英検カコモン』は3級から準1級まで対応しています。たとえば2級でライティングがどうしても書けない場合、いったん準2級まで下げて書いてみる、という使い方ができます。

孫辰洋 なるほど。実は私が提案したいのは、まさにその"逆"の運用なんです。

 

3.孫辰洋の提案①──「合格した子こそ、次の級のライティングを書け」

孫辰洋 たとえば、中3や高1で2級に合格した子。今、リザプロの生徒層を見ていても、このパターンが非常に多いんです。中学受験塾の延長で2級まで取って、そこから止まってしまう子。

なぜ止まるかというと、率直に申し上げて英検の学習はそれ自体としてあまり面白いものではないからです。合格してしまえば、本人にとって"次にやる理由"が消えてしまう。高1の春に2級を取り、高1〜高2の1年半は何もしない。気がつけば高3になり、6月の英検で間に合わずに死に絶える──この光景を、私はいくつもの高校で繰り返し目にしてきました。

ですから私が提案したいのは、「2級に合格した直後の子に、準1級のライティングだけ書かせ始める」という運用です。

リーディングやリスニングまで準1級の本格対策をやれと言うと、急に重くなりすぎる。でも、ライティングだけなら、月に1問でも、隙間時間に書いて、AIに採点してもらうだけで十分です。これを高1のうちから細く長く続けておけば、高3で慌てる必要がない。高1で2級に受かった子こそ、『英検カコモン』を解約してはいけないんです。

A ぜひそうあってほしいと、作り手として強く思います。試験申し込みから1〜2か月前に「1か月プラン」を課金してくださる方が多いというのが現状で、書籍の使い方とほぼ同じ形なんですね。直前期に問題セットを順に解いて、本番を迎える。

ただ、私たちとしては、「年間プランで継続的に英語に触れていただきたい」という思いを、ずっと持っています。試験の前だけでなく、他の級も使えますし、ライティングAI採点で繰り返し書く時間も取れる。お子様の受験とその将来を考えるご家庭ほど、長いジャーニーとして英検を捉え直していただけると、結果として伸び方も大きく変わると思っています。

 

4.「12点の壁」──ライティングのスコアアップは、どこを目指せばいいのか

孫辰洋 ライティングの目標値として、社内では16点中12点を目安にされていると伺いました。これは、なぜこのラインなのでしょうか。実は私も、生徒たちには16点中12点、そして総合では32点中24点を取らせたいと考えていまして。

A 合格基準スコアを踏まえると、合格には各技能をバランスよく得点することが必要不可欠だからです。リーディングとリスニングが大きく崩れていない前提であれば、ライティング12点が取れていれば、合格は十分視野に入ってきます。

AI採点で満点をとることは難しいかもしれませんが、「AI採点で12点が3回続けて取れるなら、本番で2級・準1級は十分に戦える」と考えていただいて差し支えないかと思います。

採点ログを7,500件以上分析した結果、同じ問題を1回目・2回目・3回目と繰り返した子は、確実にスコアが上がっています。劇的に5点跳ね上がるわけではありませんが、初回と最終回で明確な向上が見られますし、使用語数も回数を重ねるごとに伸びている。「最初は完璧でなくてよい、まず書く」ということが、データの上でも裏付けられています。

孫辰洋 16点中12点が取れない子は、IELTSのライティングではまず書けません。ここはぜひ強調させていただきたい点です。日本の子どもがIELTSやTOEFLで点を取るときの最大のボトルネックは、ほぼ例外なくライティングです。

その意味で、現状の日本のマーケットにおける"黄金ルート"は、「準1級ライティングで16点中12点を安定して取れるようになってから、IELTSに挑戦する」だと、私は感じています。

 

5.「文法書一冊を終えてから書く」は、最大のロスである

A ライティングを始める前提として、私は「中学英語の文法に致命的な穴がなく、その級の語彙力がある」──このシンプルな2条件が満たされていれば、書き始めていいと考えています。準1級でも2級でも、構文自体は中学英語で十分に書けるんです。

孫辰洋 100%同意します。ここは本当に強く打ち出していただきたい部分でして。実際の現場で起きているのは、「Vintageを完璧にしてから」「Next Stageを一冊終えてから」と称して、いつまでもライティングに着手しないというパターンです。これはものすごく勿体ない。

中学英文法と、その級の語彙さえあれば、ライティング対策は今日から始めていい。あとは物量です。書き続けて、AIに見てもらって、また書く。これだけです。──ここはぜひ「孫が言っていた」と添えていただきたい部分です。

 

6.英検は「合格をゴールにした瞬間」に終わってしまう

孫辰洋 今日いちばんお伝えしたかったのは、ここに尽きるかもしれません。

英検の勉強は、合格する"前"ではなく、合格した"後"にこそ続けるべきだということです。

順番が逆なんですよね、多くの方が。試験3か月前になって慌てて課金して、合格したら解約して、また次の試験の3か月前に課金し直す。これではどうしても、「忘れて取り戻す」コストが毎回発生してしまう。

たとえば、自分の運営するリザプロでは高3の夏前の3か月で英検を1つ合格させるコースを少人数で運営していますが、これが1人およそ80万円です。受講枠はすでに埋まっていますが、本音を言えば、私たちは推薦専門の塾ですから、こんなコースはやりたくてやっているわけではないんです。本来は、英検を取ってから来ていただきたい。それでもやらざるを得ないのは、「間に合わない子」があまりに多いからです。

逆に言えば、月1,500円前後の年間契約の投資で、将来の数十万、場合によっては数百万円の塾代を消すことができるわけです。準1級が早めに取れていれば、大手予備校さんの上位英語講座(1講座あたり30万円規模)も不要になることが多い。家計から見ても、これほどリターンの大きい教育投資はそう多くないと、私は思っています。

A その視点は、私たちもユーザーさんにきちんとお伝えしきれていなかった部分かもしれません。英検合格は通過点であって、ゴールではない。とりわけお子様の受験とその将来を考えるご家庭ほど、「英検合格」よりも「英語力の向上」のためにこのサービスを使っていただきたいというのが、作り手の本音です。

 

7.高2の終わりをゴールに置く──総合型選抜の現場から

孫辰洋 もう一点、推薦・総合型選抜の現場で、毎年のように目にする問題があります。

総合型選抜・学校推薦型選抜は、慶應法学部のように8月から出願が始まる学部もあります。高3の6月は、ちょうど一学期の定期テストとも重なる。エントリーシート、推薦状、課外活動の整理──それらを並行して進めながら、高3の6月の英検で初めて結果を出そうとすると、物理的にもう間に合わないんです。

体感ではありますが、毎年、全国の高校のうち約7割で、「英検以外の出願要件はクリアしているのに、英検が間に合わずに推薦を出せない子」が発生していると感じています。

A 多くの方が「英検は高3の一学期までに取ればいい」と思って高1の時点で計画を立てているのかもしれません。けれど高3の一学期はあまりにも忙しい。「最後のゴールを高3一学期ではなく、高2の終わりに置く」ことを、私たちも改めて発信していくべきなのかな、と今日のお話を伺って強く感じました。

孫辰洋 まさにそこです。高2の終わりをゴールに置く。そのためには、高1で2級を取った直後から、準1級ライティングを"細く"始めておく。この設計が、現状の入試スケジュールにいちばんフィットすると思います。

 

8.親はこのサービスとどう関わるべきか

孫辰洋 お子さまを持つ保護者の方々の課題は「親はこのアプリをどう使えばいいのか」ということだと思うんです。ライティング学習はリーディングや語彙と違って、保護者世代が経験していない学習領域なんですよね。

私たちの親世代は、ライティングがあったのはせいぜい東大や京大ぐらいで、一般的な大学受験ではライティングを問われずに合格してきている。だから、「我が子のライティングにどれぐらいの時間と労力がかかるのか」が、肌感覚として分からない。リーディングは単語帳、リスニングは英会話、と道筋が見えるのに、ライティングだけ手探りになる──というご家庭がとても多いんです。

A 保護者の方が一番悩まれるのは、まさにそこだと思います。ご自身でライティングをフィードバックするのは、現実的にかなり難しい。けれどAI採点であれば、書いたその場でフィードバックが返ってくる。『英検カコモン』では、スピーキングは現在まだ自己採点形式ですが、ここも今後AI化を進めていく方向です。

孫辰洋 ただ、現実として、中高生がアプリを自分でインストールして、毎日ライティングを書き続けるかというと、書きません(笑)。

ですから、私から保護者の方にお願いしたいのは、ただ一つです。「書いたという事実そのものを、過剰なくらい褒めてあげてください」。

採点結果や点数の上下は、いったん横に置いて構いません。1日1問でも書いた、その行為自体を肯定する。そうやって「英文を書くのは特別なことではなく、日常の一部だ」という空気を、家庭の中にインストールしていただけると、子どもは続けます。

私は中2で日本の高校に転校してきましたが、その時も英作文だけは書き続けていました。ちなみに中国では、英語のR・L・W・Sそれぞれに別の家庭教師がつくのが珍しくなく、最も時給が高いのは圧倒的にWです。これは、ライティングは採点が最も難しく、本人の理解不足を引き出すために「書いたものを読み、対話する」プロセスが必要だからです。だからこそ、家庭での「書く時間」を、AIで補完できる時代になったというのは、本当に画期的なことだと思っています。

 

9.対談を終えて──「合格の前ではなく、合格の後にこそ」

孫辰洋 今日お話しさせていただいた中で、私が最も大切にしたいメッセージは、やはりこれに尽きます。

英検の学習は、合格する前ではなく、合格した後にこそ続けてほしい。

直前期に2か月だけ詰め込んで、合格したら解約して、また忘れる──このループから抜け出すために、『英検カコモン』のような"年間で寄り添えるサービス"は、本来もっと早く、もっと長く使われていいツールだと思います。

A 私たちも、5月の試験を控えたこのタイミングだからこそ、改めてお伝えしたいです。英検は合格して終わるものではなく、合格してから次に進むための"地盤"です。直前だけでなく、その先のジャーニーまで含めて寄り添えるサービスでありたいと思っています。

 

※1 新設級「準2級プラス」は、過去問1回分と英検公式サンプル問題1回分、予想問題2回分

※2 「英検カコモン」ライティングAI採点公式版ユーザー調査(2025.3-2026.3)

 

関連情報

旺文社「受験生のための英検®︎カコモン」

https://eiken-kakomon.obunsha.co.jp/

・推奨動作環境:PC・タブレット・スマートフォンに対応。ブラウザは、Google Chrome最新版、Safari最新版に対応。
・対応級:英検準1級・2級・準2級プラス・準2級・3級
・税込価格(自動購読継続):1か月プラン1,800円、12か月プラン18,000円[初回ログインから24時間無料トライアル可]
・学習法コラム「英検カコモンMEDIA」:https://eiken-kakomon.obunsha.co.jp/article/

 

※英検(R)は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。