「僕は面接は免除みたいな形式で合格したんですよ。早稲田の基幹理工にです」

 そう語るのは、帰国生入試で早稲田大学に合格した村井さん(仮名)。彼は、アメリカやドイツなどでの海外経験を活かして、日本の大学を目指した一人です。

 「情報が全く届かない海の向こうの孤島」と自身の受験環境について、村井さんは苦笑いを浮かべます。

「日本にいる友達は塾や予備校で最新情報をどんどん入手できるのに、海外だとほとんど何も届かない。大学のホームページを必死に見ても、帰国生向けの詳細な情報はごくわずか。それなのに合格するための戦略は立てないといけない」

 そんな環境で受験準備をした村井さんが、「面接免除で合格」という快挙を成し遂げられたのは、いったいなぜなのでしょうか?

 インタビューを通して「帰国生入試の知られざる攻略法」が明らかになってきました。

 「優れた学校の成績も大事だけど、それだけじゃ足りない。帰国生の強みを最大限に活かす戦略が必要なんです」

村井さんの成長した環境は「繰り返す海外移住」

 今回お話を伺ったのは、早稲田大学の帰国生入試で見事合格を果たし、面接免除となるほど圧倒的な実績を持つ村井さん(仮名)。

 村井さんは公務員の父と会社員の母のもと、幼少期から日本と海外を行き来する生活を送りました。

 東京で生まれ、公立の小学校に通っていましたが、中学進学と同時に父の転勤によりアメリカへ渡ることに。英語が分からない状態で現地の公立中学校に入学し、最初は言語の壁に苦しみながらも、努力を重ね3年間を過ごしました。

 しかし、高校1年生では再び父の転勤により、ドイツのインターナショナルスクールへ転校。そこでは勉学だけでなく、課外活動にも積極的に取り組むようになりました。こうした多様な環境での経験を活かし、最終的に早稲田大学の帰国・外国生入試に合格。現在は基幹理工学部に在籍し、数学を専門的に学んでいます。

なぜ日本の大学に?ー早稲田を目指すきっかけ

 村井さんは当初、海外大学への進学を考えていました。実際にオックスフォード大学などイギリスやスコットランドの大学への出願も視野に入れていました。しかし、早稲田大学のパンフレットを偶然にも高校で見た時が転機でした。

 というのも、最終的には日本で就職する予定だった村井さんにとって、日本の就活においての有利さや、日本にいる家族の存在は魅力的でした。特に、早稲田大学が魅力的だった点は、帰国生向けのプログラムが充実しており、9月入学が可能だった点。

このように複数の条件が揃ったことで、早稲田大学への進学を視野に入れるようになりました。

数学への興味

 村井さんは幼い頃から、数字を使って考えることが好きでした。小学生のころはパズルや計算問題に熱中し、問題を解くことが純粋に楽しいと感じていたそうです。また、中学・高校では数学の抽象的な概念にも興味を持つようになり、特に三平方の定理の証明方法が100種類以上あることを知ったとき、その奥深さに魅了されました。

「同じ問題でも解き方がたくさんあることが面白いし、論理的に思考する力が鍛えられるところが数学の魅力だと思います」

このように、村井さんは数学の魅力に引き込まれることで、大学でも数学を深く学びたいと考えるようになりました。その結果、早稲田大学の基幹理工学部を志望することを決めるに至ったそうです。

早稲田の帰国生入試とは?

 早稲田大学の帰国生入試は、国際教養学部など一部の学部を除き、ほとんどの学部で行われています。

 まず、1次試験では日本語と外国語の外部試験、および志望動機書の提出をします。続いて、2次試験の面接を受験し、合否が決定します。

 日本語試験としては、日本留学試験(EJU)や日本語能力試験(JLTP)が用いられます。外国語試験としては、TOEFL、ELTS、TOEICなどの英語試験の他に、フランス語やドイツ語でも受験可能です。

 対象学部と選考方法の詳細は以下の通りです。学部やプログラムごとの入試も存在するため、公式HPを確認してみてください。

出典:早稲田大学 2024 年度帰国生入学試験要項

 村井さんの場合は、9月入学のプログラムを受験したため、志望動機書・学校の成績・英語試験・面接が課せられました。特に、受験の準備だけでなく、卒業証明書などの書類を準備するのも大変だったそうです。

 そのような状況で、パンフレットや大学の公式サイトを確認するだけでなく、直接大学に問い合わせることで必要な情報を集めました。

受験対策①:成績の維持

 高校時代、勉強熱心だった村井さん。「高校から17時に帰宅してから小休憩を除き23時まで勉強していた」とのことで、1日最低でも4時間程度は学習に時間を割いていました。

 結果として、日本の高校の評定に相当するIB(国際バカロレア)*で42/45という優れた成績を収めました。当時の早稲田の帰国生入試では、IBスコアが39以上ないと厳しいと言われる中で、十分な成績を保持していました。また、中学3年間のアメリカ経験と高校でもインターナショナルスクールに通った経験から十分な英語力を身につけました。

注:総合 45点満点(最高7点×6教科+コア科目3点)の評定です。24点が高校卒業に必要となります。海外を含めて国立大学では35点、医学部では40点が目安となります。

受験対策②:課外活動の実施

 村井さんは大学入試での志望動機作成のため、様々な課外活動に参加しました。これらの活動は、インターナショナルスクールでの紹介を契機として行うことができたそうです。

タイの孤児院でのボランティア

 村井さんはタイへ赴き、現地の孤児院で1週間のボランティアを行ったそうです。そこでは孤児に対して英語や算数を教えるだけでなく、生活を共にしながら孤児たちがが幸せに暮らせる環境づくりに注力したとのことでした。

「現地の子どもたちは、教育を受ける機会が限られていました。それでも、目を輝かせながら英語を学ぼうとする姿に、教育の大切さを実感しました」

 また、物理的な作業も多く、橋をかけたり庭を作ったりする経験は、自らの手で社会に貢献することの大切さを学ぶきっかけになったといいます。「自分が作った橋を子どもたちが渡る姿を見たとき、目に見える形で役に立てたことが嬉しかった」と語っています。

ドイツの小学校でのボランティア授業

 また、ドイツの小学校にボランティアをしに行った際は、子供たちに算数を教えていたそうです。足し算の授業では、ブロックを使ったり、手を使って数を数えたりする工夫を教えることで、学びの楽しさを伝えられたとのことでした。

「算数は世界共通の学問なのに、教え方ひとつでこんなに子どもたちの反応が変わるんだと驚きました。」

 ドイツ語という言葉の壁を超えて、数学という共通言語でコミュニケーションが取れた経験は、村井さんにとって貴重なものとなりました。

「言葉が違っても、数字を通じて理解し合える瞬間が嬉しかったですね。子どもたちが新しい概念を学び、楽しそうに問題を解く姿を見て、自分も教育の力を再認識しました。」

受験対策③:志望動機の仕上げ

 高校の先生に何度も添削してもらい、説得力のある志望動機を練り上げました。大枠としては、村井さんの数学を学びたい思いと、課外活動や自身の経験を繋げていったそうです。

 具体的には、ドイツの小学校でのボランティア経験を語りました。足し算において答えや心理はたった一つである一方で、ブロックを使ったり、手を使ったりと解法が様々であることの魅力を伝えました。最終的には、数学で鍛えられる論理的思考力を様々な分野に応用し、より幅広い問題を解決に役立てたいとアピールしました。

まとめ

 村井さんは、圧倒的な学業成績と豊富な課外活動の実績を武器に、早稲田大学の帰国生入試で見事合格を果たしました。帰国生入試を成功させるためには、高い学力、英語力、そして課外活動への積極的な取り組みの3つが鍵となります。

 特に、成績だけでなく、課外活動を通じて自分の興味や社会貢献への姿勢を示すことが重要です。

 最後に村井さんに理系ならではの対策方法があるか、聞いてみました。

「帰国子女で理系なので、大学進学の準備は何かと大変だと思っていたけれど、自分の興味を深ぼることが結局一番大事でしたね」

「そこに海外要素が付け加えられるのが、帰国子女入試の大きな強み。ぜひ環境を活かしてほしいですね」