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 「よくわからない大学でITを学ぶくらいなら、沖縄に行って専門学校に通った方がいいのではないか?」――そんな仮説を抱き、未来図代表の孫は取材に向かった。SAPジャパンと提携し、日本で初めてSAP専門教育を導入した「沖縄ビジネスソリューション専門学校」を運営する宜保直哉理事長に話を聞いた。果たしてその仮説はどう変わったのだろうか。

日本初の挑戦、なぜすごいのか

 沖縄ビジネスソリューション専門学校は、国内唯一の「SAP University Alliances」認定専門学校である。世界中の大学や教育機関と同じ最新教材やプログラムを無償で利用でき、グローバル基準のIT教育を沖縄で受けられるのは画期的だ。沖縄から世界へ挑戦できる可能性を秘めた教育拠点といえるだろう。

SAPとは何か

 「SAP」とは、ドイツに本社を置く世界最大級のソフトウェア企業の名前であり、その同社が提供する基幹システム(ERP:Enterprise Resource Planning)を指す言葉でもある。ERPとは、会計・人事・物流・販売といった企業活動の根幹を一元的に管理する仕組みで、世界中の大手企業で導入されている。

 SAPを扱えるエンジニアやコンサルタントは「即戦力人材」として高く評価され、平均年収も他のIT職種に比べて高い水準にある。単なるITスキルではなく、「企業経営を理解し、仕組みを支える専門家」としての役割が期待されているのだ。

 

 

なぜ沖縄にSAPを?

孫:そもそも、なぜ沖縄に拠点を置かれたのですか?

宜保理事長:きっかけは、沖縄ビジネスソリューションズ株式会社(代表取締役 宜保祐樹)の存在です。宜保社長はもともとエンジニアでしたが、SAPに携わるようになり、その報酬やキャリアの自由度に可能性を感じ、「地元・沖縄に何か還元できないか」と考え、本社を沖縄に置くことを決めたのです。実際の活動拠点は東京でしたが、あえて本社を沖縄にしたのは、所得格差や産業構造に課題を感じていたからです。

孫:やはり「沖縄」という地域性が大きいのですね。観光業の比率が高い分、雇用が不安定で所得も伸びにくい。教育や子どもの貧困問題にも直結しますよね。

宜保理事長:その通りです。観光業が産業の約2割を占めるため、不安定な雇用になりやすく、平均所得も全国的に低い水準にとどまっています。そこでまずは企業としてSAPエンジニアを育てようとしたのですが、会社の規模的にもなかなか人材を増やすのは難しく。ならば「学校をつくろう」と考えたわけです。ITやエンジニアリングの分野は比較的報酬が高く、リモートワークの広がりも追い風になりました。

孫:私自身、沖縄という土地だからこそ浸透しやすい部分があると思っています。東京では中学受験が当たり前になりつつありますが、沖縄はまだそこまで過熱していない。むしろ「多様な選択肢をつくる」という点では、沖縄の方が新しいモデルを試しやすいのではないでしょうか?

宜保理事長:確かに、沖縄は教育格差の影響が大きく、大学進学率も家庭の事情で低い傾向があります。そのため専門学校に進む割合が高いんです。だからこそ、ここで新しい選択肢を提示する意義は大きいと考えています。

孫:なるほど。では、その新しい選択肢を支える仕組みとして導入された「SAPUniversity Alliances」についても教えていただけますか?

宜保理事長:日本で初めて専門学校として認められたのが当校です。SAPがグローバルに展開している教育機関向けのプログラムがあり、一定の審査を経て加盟することができます。加盟すると、例えばライセンス料が無償になったり、最新の教材を使って学べたり、世界中の講師とつながるトレーニング活動に参加できるんです。

 

本当にSAPコンサルタントになれる?

――SAPを学んだ学生は、卒業後にどのようなキャリアを歩むことができるのでしょうか?

宜保理事長:基本的にはSAPのエンジニア、つまりコンサルタントを目指すことになります。ただ沖縄は観光や福祉が中心の地域で、IT産業の母数が限られています。そのため大企業が一度に多くのIT人材を採用する環境ではなく、「出口」が課題になることは否めません。

孫:やはり保護者の方が一番気にされるのはそこですよね。「もし100人が学んだとして、全員がSAPエンジニアになれるのか?」という疑問です。

宜保理事長:感覚的には8割程度の学生がSAPエンジニアやコンサルタントとして就職できると見ています。残りの学生も、ほとんどはエンジニア職に進むことが可能でしょう。さらにSAPは「DX人材」としての需要が年々高まっており、たとえ地元企業がSAPを直接導入していなくても評価されるケースが増えています。実際に、SAP事業を展開する企業から沖縄進出の問い合わせもあり、営業所を設立する動きも出ています。

 

SAPコンサルタントに向いている人材とは?

――SAPを学ぶ上で、どの程度の努力が求められるのでしょうか? また、どんな高校生に入学してほしいと考えていますか?

孫:SAPという分野に取り組むにあたって、専門学校として卒業生の質を担保するには、学生はどれくらい努力する必要があるのでしょうか?

宜保理事長:SAPは多くの人にとって聞き慣れない分野です。だからこそ授業のあとに小テストを行い、習熟度を講師と学生で共有しています。一歩一歩確認しながら学べる仕組みを整えているので、一般的なIT専門学校よりも理解を着実に積み上げやすい環境だと思います。

孫:なるほど。では実際に、理事長として「こんな人に来てほしい」と考える人物像はありますか?

宜保理事長:やはり明るく、コミュニケーションが取れる学生ですね。そして「分かりません」と素直に言えることが何より大切です。パソコンが得意な人でも不得意な人でも、SAPに関しては皆がゼロからのスタート。むしろ分からないことを分からないと言える正直さを持つ人の方が、この学びには向いていると思います。

 

直面している苦労とは?

孫:実際に取り組んでいて一番大変なことは?

宜保理事長:やはり「SAPって何?」「ERPって何?」という理解の壁です。地元の大企業がSAPを使っていないため、「そんなシステム大したことない」と思われがちなんです。実際に「SAPで稼げる」と話しても「それって詐欺じゃないの?」と疑われることもあります。認知度をどう高めるかが最大の課題ですね。

 

未来の姿、どこを目指すのか?

――今後の展望について伺います。学生募集のあり方や、県内・県外の割合、さらには海外とのつながりまで、どのように考えていらっしゃいますか?

孫:将来的には、県外や海外からの学生を受け入れる構想もあるのでしょうか。私自身、台湾やインドの高校の先生方と話す機会があるのですが、「日本で学びたいけれど、地元でITを学ぶのは難しすぎる」「4年制大学に通えるほどの経済力はない」という声をよく耳にします。そうした学生にとって、御校が出口になり得るのか――その可能性についてどうお考えですか?

宜保直哉理事長:SAPはグローバルソリューションですから、もちろん海外からの受け入れも視野に入れています。その上で、やはりベースにあるのは「沖縄の経済に貢献したい」という思いです。せっかく地元に学校をつくった以上、沖縄の若者にとって優位性を持てる場にしたい。「南の端でできることは北の端でもできる」という発想で、沖縄から世界へ挑戦できる道を拓きたいと考えています。

 

宜保理事長からの一言

――最後に、高校生や保護者の方々に向けて、伝えたいメッセージがあればお願いします。

宜保理事長:一番大きいのは「ITに行けばなんとかなる」という漠然とした期待です。ITは華やかに見えますが、実際には多様なエンジニア職があります。報酬や自由度を求めるならSAPは有力な選択肢ですが、従来はその道が十分に提示されてきませんでした。そのため、学費が「投資」ではなく単なる「コスト」と捉えられてしまうのです。

宜保理事長:だからこそお伝えしたいのは、「出口を意識してほしい」ということ。専門学校に入学する際には、とにかくその2年間を何のために学ぶのか――入試の時点で、受験生や保護者がしっかり理解しておくことが大切だと思います。働き方改革は企業が与えてくれるものではなく、自分でつかみ取るもの。その手段としてSAPを学び、出口を見据えたキャリアを築いてほしいのです。

孫:確かに、御校のカリキュラムには簿記や業務理解なども含まれていて、「本気で使える人材を育てる」という印象を受けます。なぜそこまで業務知識を重視されているのでしょうか?

宜保理事長:SAPは「業務系エンジニア」の代表です。システムを導入するには、業界や業務の流れを理解していなければなりません。特に会計・物流・営業といった基礎知識は不可欠です。そのため、FI(会計)、MM(購買・物流)、SD(販売・営業)といったコアモジュールに特化して教育しています。技術だけでなく「人・物・金の流れ」を理解する力を養うことで、卒業後すぐに即戦力として活躍できる人材を育成しているのです。

 

孫の感想は?

 日本初のSAP専門学校という挑戦は、まさにこれから注目されるべき存在だと確信した。まだ学生数は多くないが、すでにSAPジャパン本社に招待される学生も現れており、その可能性は十分に示されている。理念からカリキュラムに至るまで、極めてユニークで面白い取り組みだ。

 正直、東京で何となく時間を過ごすくらいなら、沖縄で本気で学んだ方がずっと価値がある。下手に大学でITを学ぶよりも、ここでSAPエンジニアを目指して努力する方が、確かなキャリアにつながるだろう。宜保理事長が語ったように、「わからない」を素直に言える人なら、パソコンに触れた経験がなくても挑戦できる。自分で夢をつかみにいける環境が、ここにはある。

   これからの展開が楽しみなので継続的に注目するべき学校だと考える。