5月30日、Xアカウント「ダイヤモンド社 教育情報」から次のような投稿がありました。

「神奈川に初の開智学園系列校が2027年度にできる」
「2020年度から男女共学化したものの今回の決断となった模様」
衝撃的な見出しばかりが目につきますが、これが事実ならかなりのビッグニュースです。
聖ヨゼフ学園が開智学園系列になるとどうなるのか、高校研究家の筆者が深掘りします。
聖ヨゼフ学園とは?
聖ヨゼフ学園中学・高等学校は神奈川県横浜市鶴見区にある私立共学校。カトリック系のミッションスクールとして開校し、長らく女子校を貫いてきました。
併設の小学校を持つ一貫校であり、「ごきげんよう」の挨拶に象徴されるような、上品な校風でも知られています。
もっとも、近年の私学を取り巻く環境は大きく変化しています。
少子化の進行に加え、教育ニーズの多様化によって、各校には従来以上に特色ある教育が求められるようになりました。
聖ヨゼフ学園も例外ではありません。
2017年には大学入試改革への対応として高校募集を再開、2018年には中学校で国際標準の教育にチューニングした国際バカロレアの認定を受けています。
また2020年には共学化を始め、男子生徒を募集するなど、時代の変化を見据えた改革を進めてきました。
こうした歩みを振り返ると、仮に今回報じられている開智学園グループ入りが事実であれば、それは突発的な方針転換ではなく、学校改革の延長線上に位置づけられる決断と見えます。
開智学園とは?
グループインを報じられた開智学園は、近年の首都圏私学界において、最も勢いのある学校グループの一つとして知られています。
学校法人開智学園は、関東地方で大学や複数の小中高等学校を運営している学校法人です。
ノーベル賞受賞者の大村智氏が名誉学園長を務めていることでも知られています。
その中心となる学校は、埼玉県さいたま市岩槻の開智中学・高等学校です。
中高一貫部の設置は1997年と比較的新しいものの、埼玉では私立校の雄として強い存在感があります。
近年はコンスタントに東大2桁人数合格者を出しており、もはや「滑り止め校」の域を超えた存在になりました。
開智学園の特徴は、一校だけの成功にとどまらず、学校グループとして勢力を拡大してきた点にあります。
2011年には埼玉県北東部の加須市に開智未来中学・高等学校を開校しました。
閉校した県立高校の跡地を活用した学校で、首都圏の主要通学圏からはやや離れた立地にあります。
しかし、探究学習や英語教育を軸とした独自路線によって評価を高め、東大含め難関大に継続的に合格者を輩出しています。2021年には東大推薦合格者も出ています。
2015年には日本橋に開智日本橋学園中学・高等学校が誕生しました。
これは日本橋女学館中学校・高等学校を母体として再編された学校です。
国際バカロレア認定校として国際的な教育に力を入れており、2026年には東大理三合格者も出しています。
2020年には茨城県つくばみらい市で開智望中等教育学校を開校しました。
人口増加が続くつくばエリアを舞台に、こちらもIB認定校としてスタート。研究学園都市という地域特性とも相まって、今後の成長が期待されています。
そして2024年に開校したのが開智所沢中等教育学校です。立地は東京からのアクセスもいい埼玉県所沢市。
教育の軸は、「探究」「サイエンス」「グローバル」で、開校2年目である2026年の出願者延べ人数は15,067人と凄まじい人気を博します。
さらに特徴的なのが、開智学園独自の入試制度。
「これら5校を何回・何校受けても受験料は20000円」を貫き、とにかくグループ校への受験のハードルが低いため、受験者数も膨れ上がりやすいのです。
計上されている数値は延べ人数であることには注意が必要です。
それでもなお、近年の開智学園の勢いは際立っています。
探究学習や国際教育といった、学校推薦型入試や総合型選抜など「新しい入試」に対応する教育ニーズを的確に捉えながら、岩槻や加須のような郊外立地でも実績を積み上げる一方、日本橋、つくば、所沢といった成長性の高いエリアにも積極的に進出してきました。教育内容の刷新と学校経営の拡大を同時に進めている点こそが、開智学園最大の強みと言えるでしょう。
聖ヨゼフ学園が開智学園系列になるとどうなるのか
では、今回報じられている情報が事実だとすれば、どのような変化が起こるのでしょうか。
開智学園はこれまで神奈川県には拠点を持っていませんでした。仮に聖ヨゼフ学園がグループ入りすれば、開智学園にとって初の神奈川進出となります。
まず間違いなく、高い人気が集まるでしょう。
中学受験では、東京都と神奈川県の入試が2月に集中する一方、埼玉県や千葉県では1月から入試が始まります。
そのため、埼玉県や千葉県の中学校は「前受け校」、つまり第一志望の練習として受験することが多いのです。
埼玉県に位置する開智中学校もそのうちの一つ。
「前受け」として受ける受験生がそもそも多いので、前述の独自の入試制度を考えると、受験の金銭的ハードルが低い。
また、共学校であることも追い風になりそうです。近年人気を爆発的に伸ばしている渋谷教育学園や広尾学園は、共学校。
東京の私立有名校はほとんどが男子校・女子校であることは長らく指摘されてきました。
近年は男女共同参画社会意識の高まりもあり、中高時代から共学に通わせたいという親や、共学に通いたいという受験生も増えている。
その風潮の受け皿となっているのが渋渋や広尾です。
そうした中で、開智学園系列の共学校が神奈川に生まれれば、都内の共学校受験者層を一定奪う存在になる可能性が高い。
東京都心や横浜中心部へのアクセスに優れた鶴見に位置する共学校という点は、受験市場において一定の強みになると考えられます。
伝統的な男子校、女子校が幅を効かせる中、共学の中高一貫校は比較的ブルーオーシャンなのです。
「では、東大にバンバン合格者を出すような「進学校」になるだろうか?」と言われるとそうではないかもしれません。
そもそも、東大合格者の多さで学校の価値を図ることは旧時代のものです。開智学園は先を見ています。
むしろ焦点が当たっているのは、海外大学や総合型選抜など「新しい大学入試」。
積極的な国際バカロレアの導入や探究学習、ICT教育の実施は新しい時代を見据えたものです。
これからの時代に対応するような教育を行う学校として、横浜で堅実に人気を固めて行きそうな予感がします。
まとめ
もちろん、懸念点も存在します。
聖ヨゼフ学園はカトリック系、小中高一貫の名門。その校風や風土に新進気鋭の開智学園がどう乗っていけるのか。それは未知数です。
仮に今回の報道が事実であれば、それは単なる学校名の変更ではなく、神奈川の私学地図に新たな選択肢を加える動きとして注目されることになりそうです。
横浜に新しい風を吹かせるのではないでしょうか。いずれにせよまだ大部分の詳細は不明なので、公式発表を待ちたいところです。





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