95%の教員が「課題あり」と回答する探究学習の現実

2022年度から高校で本格導入された「総合的な探究の時間」。生徒が自ら問いを立て、情報を収集・整理し、まとめ・表現するという一連のプロセスを通じて、思考力や判断力、表現力を育むことを目的としている。

しかし、現場では深刻な課題が浮き彫りになっている。教育支援活動を行う認定NPO法人カタリバが2022〜23年に全国の教員を対象に行った調査では、95%以上の教員が探究学習に「課題を感じている」と回答した。

教科書も単元も決まっていない中でテーマを設定し、カリキュラムをつくり、生徒一人ひとりに伴走する──。その負担は想像以上に大きい。さらに、探究が深まるほど「専門家の力が必要」という壁にぶつかる。結果として、大学の研究者に問い合わせが殺到し、無償対応を求められる研究者側も疲弊するという悪循環が生まれている。

では、この状況をどう打開すればよいのか。一つの解として注目したいのが「社会コンテスト」の活用である。

探究学習に「ゴール」を設定する意義

探究学習が教員・生徒双方にとって負担になりやすい理由の一つは、「どこに向かえばいいのか」が見えにくい点にある。教科学習であれば定期テストや入試という明確なゴールがあるが、探究にはそれがない。

ここで社会コンテストが果たす役割は大きい。コンテストという「出口」があることで、生徒は目標を持って取り組める。教員も「何を、いつまでに、どのレベルまで仕上げるか」という指導の軸ができる。さらに、外部の審査員からフィードバックを得ることで、学校内だけでは得られない視点や評価基準に触れることができる。

とりわけ「社会課題の解決」をテーマにしたコンテストは、探究学習との親和性が高い。生徒が調べ、考え、提案したことが、実際に社会へ届く可能性がある。その手応えこそが、探究学習を「やらされる活動」から「自分ごとの挑戦」へと変える鍵になる。

取材で見えた「本気の提案」が生まれる場

筆者は2025年10月、そうしたコンテストの一つである「次世代政策サミット JAPANビジョン2050」の決勝大会を取材した。35歳以下を対象とした政策立案コンテストで、最優秀者には現役国会議員への直接提言の機会が与えられる。

会場となったハリウッド大学院大学には、スーツ姿の社会人から制服の高校生まで、多様な参加者が集まっていた。このコンテストでは年齢別の部門分けがなく、全員が同じ土俵で競う。

印象的だったのは、高校生チームが大学院生や社会人と互角に渡り合う姿だ。「地域交流レストラン」という政策を提案したあるチームは、既存の子ども食堂や道の駅を調査したうえで実現可能性を検証しており、審査員からの鋭い質問にも自分たちの言葉で応答していた。

最優秀賞を獲得したのは、ご夫婦で参加されたコンビ。「子育て世代の“時間の貧困”を解消する」というテーマでプレゼンした彼らはその後、小渕優子衆議院議員への政策提言を行っている。

探究学習に活用できる社会コンテスト

次世代政策サミット以外にも、高校生が参加できる社会コンテストは数多く存在する。探究学習の「出口」として活用できる主なコンテストを紹介しよう。

■ 政策甲子園 

全国の高校生を対象にした政策コンテスト。自分たちで社会課題を調査し、政策を立案してオーディエンスの前で演説する。2024年の第2回大会では総投票数8,548票を集めた。最優秀賞チームは、提言した政策テーマを所管する大臣または関係省庁での政策報告会に参加できる。3〜5名のグループで応募し、募集は例年4〜6月。

■ マイナビキャリア甲子園 

国内最大級の高校生ビジネスコンテスト。2025年の第11回大会では過去最多の3,136チーム・11,595名が参加した。協賛企業が出題するテーマに対してチームで解決策を提案する形式で、決勝大会はTBS系列でテレビ放送される。企業の担当者から直接フィードバックを受けられる点が特徴だ。

■ 高校生ビジネスプラン・グランプリ(日本政策金融公庫) 

2024年度は536校・5,151件の応募があった大規模コンテスト。社会課題の解決やSDGsを意識したプランが多く、最終審査会は東京大学本郷キャンパスで開催される。創業マインドの育成を目的としており、実現可能性を重視した審査が行われる。

持続可能な探究学習のために

冒頭で紹介したカタリバの横山和毅さんは、探究学習の課題解決に向けてこう提言する。「自治体・高校側が予算をつけてコーディネーターを配置し、地域の中で教育に関わる人をリソースとして集める取り組みを増やすことが有効」。

社会コンテストは、まさにそうした「外部リソース」の一つになりうる。主催団体が審査員や専門家を用意し、フィードバックの機会を提供してくれる。学校側が一から外部連携を構築する必要がない点で、現場の負担軽減にもつながる。

もちろん、すべての探究学習をコンテスト参加に結びつける必要はない。しかし、「出口」の選択肢として社会コンテストを視野に入れることは、教員にとっても生徒にとっても大きな意味を持つ。探究学習が本格化した今だからこそ、こうした「社会への出口」を積極的に活用していくことが求められているのではないだろうか。