止まらない早稲田大学のローカル私大化・・・。一体何が起きているのか。
40代以上の方々にとっては、早稲田大学は地方出身者で苦学して入学した人の多い、バンカラ気質の残る学校という印象があるのではないでしょうか。
しかし、2025年度入試では一般選抜・大学入学共通テスト利用入試の合格者のなんと80.6%が関東圏の高校出身となっています。ちなみにこちらは一般合格者の中の数字ですので、付属・系属校からの内部推薦やその他推薦組を含めるとさらに高くなると考えられます。
私が早稲田大学に入学した10年ほど前は65%程度だったので、この10年で1割以上上昇したことになります。
近年は「もはや早稲田は関東圏のローカル私大」と揶揄する声も近年多く見られるようになっており、嘆きの声も目立ちます。
合格者を地方別で見ると、最も少ない東北地方出身者は全体の1.15%、四国地方出身者は全体の0.85%と、もはや絶滅危惧種と言える状況になっています。
では一体なぜこのような状況になっているのか、考察していきたいと思います。
進む入試の複雑化と入試レベルのインフレ・・・。恩恵を受ける首都圏一貫性とついてこれない地方の格差とは
関東圏の学生の割合が増えている大きな要因としてまずあげられるのは、入試レベル、そして受験生のレベルのインフレでしょう。
早稲田大学でも2021年の入試改革以降、総合問題(政治経済学部、国際教養学部、社会科学部、人間科学部)や英語4技能テスト利用方式の入試の新設(文学部、文化構想学部)、数学から逃げることが出来なくなった一般入試(政治経済学部)など、受験生に求められる負担は以前のマークシートワンチャン入試時代から増大しています。
その入試に対応するためには、私立公立問わず6年一貫教育を行い、早め早めに仕上げていかなければ戦えない状況となっています。また、首都圏と地方とでは、予備校などの受験のノウハウに雲泥の差があることもその一因となっていると考えられます。
首都圏では中学受験競争が苛烈であり、全体の20%強が中高一貫校へ入学します。
一方で、東北地方や四国地方には有力な中高一貫進学校は少ないです。
加えて、過去には優秀な進学実績を残していた公立進学校であっても少子化、人口の首都圏集中の煽りを受け倍率は低下傾向にあり、実績も奮わなくなりつつあります。
このような要因から、地方のトップ人材を首都圏の名門大に輩出するという役割を完全には果たせていない状況であると考えられます。
実際、過去には優秀な進学実績を叩き出していた、愛媛県No.1の公立進学校である松山東高校は近年では定員割れする年度も見られ、東北地方でも同様です。(山形東高など)
以前、地方国立大の医学部医学科は首都圏の一貫校に通う学生の「医師免許教習所」と化しつつあると別の記事で述べましたが、地方トップクラスの学生が首都圏中高一貫校の中位レベルの学生と同レベルになってきており、全体では信じがたいほどに格差は広がってしまっていると教育関係者は言います。
このまま早稲田の入試問題の複雑化が進んでいけば、さらに関東圏の学生の割合が増えていき地方勢はさらにおいていかれることは間違いないでしょう。
そもそも地方から早稲田に通わせられるのは「地方豪族」だけ。
次に考えられるのは、金銭面の問題です。
私が在学していた頃から強く感じていたことですが、まず首都圏在住者は早稲田大学への進学ハードルは地方勢と比較してかなり低いという当たり前の事実があります。
一方で、地方から都内の大学への進学(上京)は、両親の説得など余計なハードルが増える選択となり、金銭面を考えても快く送り出せる家庭はそう多くないでしょう。それでは早稲田大学の4年間の学費を算出してみましょう。
ストレートで卒業したとしても、文系学部で 500~520万円(国際教養学部は680万円)、理工系学部では 725万円程度が相場です。
地方から入学する場合、学費に加えて下宿代がかかります。東京圏の不動産価格上昇を受け、早大生の中で比較的家賃が安く通いやすいエリアとして人気の西武新宿線沿いであっても7万円程度の家賃が相場となっています。プラスで仕送り6万円(平均)としても月13万円×12ヶ月×4年間で624万円。その他定期代など追加の出費などを考えると、最低でも1200万円以上かかる計算になります。
当たり前のようにこの金額を出せる家庭が地方にどれだけあるか、と考えても都内の私大に送り出すのは難しいことがわかります。
実際、私の在学中も地方出身者は豊富な仕送りと軽いバイトで学生生活を謳歌していた印象で、反対に千葉や埼玉から1時間〜1時間半程度かけて通学する学生の方がむしろ家庭の経済的体力的に余裕がなさそうに映ったものです。筆者の友人で早稲田大学までドアtoドア1時間程度の場所に実家のある友人の、受験校決定時のエピソードを紹介しましょう。
彼は、私立文系に絞り早稲田大学を目指すか、東北大学か北海道大学など、地方の旧帝国大学を目指すか迷っていたそうです。
仮に関東圏の通学圏内の学生であれば、早稲田大学に進学しても文系学部の学費は 500~520万円と、その他の追加出費を加味してもせいぜい600万年程度で済みます。(高校までも実家に在住していたため、生活費や食費などが1人分増えることについては増減なしとし考慮しないこととします。)
一方で、仮に地方の旧帝国大学に進学したとすると、学費は入学金28万円と年間の学費53万円×4年間で212万円となります。
加えて、仮に仙台の大学付近で学生向けのアパート(3万5000円)を契約したとしましょう。家賃に加えて4万円程度仕送りすると仮定すると7万5千円×12ヶ月×4年間で360万円。その他諸々にかかる費用を加えて400万円程度として、学費と足し合わせて612万円。地方の学生が東京の私大に進学する場合と比較すると半分以下ですが、首都圏の学生が地方の国立大に進学するより、実家にいながら私立大に進学した方が安く済むのです。そのため、こちらの友人は両親から「出費が変わらないから受かる方にしてくれ」と言われ早稲田大学に決めたそうです。
これは、関東圏にちょうどいいレベルの国立大がないことにも関係しますが、より労力を増やして出費も増やす選択は取りづらく、首都圏の学生にとって早慶を目指す選択がかなり安パイな選択肢となっていることが伺えます。
以上のことから、早稲田大学が地方出身者の比率を上げるためにはまず都心での生活を可能にする施策が必要でしょう。また、国立大の学費無償化などが進んだ場合、より地方からの進学率が下がる可能性もありますので、引き続き注視が必要です。
早稲田の優秀な学生を確保したい姿勢は「多様性重視」と逆行
早稲田大学当局は、学生の属性に偏りが生まれてきていることに対し、「多様性を重んじる本校としては本意ではない」と発表しているが、この数年の早稲田の改革とトレードオフなのではないかと筆者は考えます。
早稲田大学では2021年に看板学部の政治経済学部を始めとする複数学部で従来の文系3教科受験を廃止し共通テストと総合問題を中心に学生を選別する改革を行い、結果として難関国立の併願先としての優先度を増しただけでなく、本学部への志望度が高い受験生の割合を増やすことに成功したという背景があります。
この改革により早稲田大学は、首都圏におけるポジションを高めることに成功したわけですが、地方学生の減少はその成果とトレードオフとも考えられます。
今後、仮に地方出身者を過度に優遇するような施策を行なったとすれば立ち位置の衰退を招聞かねません。今後の大学の施策によって、本大学が何を優先していくのかが読み取れます。これからの早稲田の動向に目が離せません。

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