2027年秋スタート「カレッジ・オブ・デザイン」とは何か?

 2027年秋、東京大学に新しい学部が誕生します。その名は UTokyo College of Design(CoD)──カレッジ・オブ・デザイン。

 東大が「学部」を新設するのは約70年ぶりだと言われています。全授業英語、5年一貫の学士+修士課程、文理融合カリキュラム、そして英語面接やIB・SATが使える入試制度。

 従来型の学部とはまるで設計思想が違う、東大の“未来型学部”といえる存在です。

 既存の英語授業(PEAKプログラム)の募集停止という大きな決断の先に生まれたこのCoDは、「東大の教育がグローバルに変わる象徴」として国内外から大きな注目を集めています。特に、海外で学んだ経験をもつ帰国子女にとっては、これまでの学びを最大限に活かせる“追い風”となる学部です。

 本記事では、そんな新学部の全貌を、
1 CoDとは何か、「デザイン」とは何を意味するのか
2 教育プログラムの特徴
3 どうすれば合格できるのか(入試戦略)

4 東大新学部で、何が変わるのか?
 の4部構成で詳しく解説します。

カレッジ・オブ・デザイン(CoD)とは何か?

 まず最初に押さえたいのは、CoDがとは何かということですね。「デザインということは、芸術とか?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

 東大公式サイトでは、CoDについて次のように説明しています。

「多様な学術知を“デザイン”によってつなぎ、融合し、
未来の社会のあり方を自ら構想し創り出していく人材を育成する」

(UTokyo College of Design Admissions Overview 2027 より)

 ここで書かれている通り、東大が掲げる “デザイン” は、美術や建築のような「造形」だけを意味しません。社会の構造や制度、都市のあり方、人の健康や文化、テクノロジーの使い方まで、未来の社会のかたちを構想し、設計していくための総合知を意味しているとのことです。

 従来の文系・理系という枠組みをこえて、社会の複雑な課題を解き明かし、新しい価値を生み出す“デザイン力”を育てることを目的としているとされています。

東大が言う「デザイン」とは何か?

 CoDの最もわかりづらいポイントが「デザインとは結局何をするのか?」という点です。

 従来の「デザイン=アート・建築」という理解では、CoDの学びを捉えきることができません。

CoDの“デザイン”の定義

  • 複雑な問題を理解する力(分析)
  • 他分野の知を組み合わせる力(統合)
  • 新しい価値を創造する力(創造)
  • 社会に実装していく力(実践)

 この4つを総合した、「未来の社会を設計する力」だとされています。

 実際のカリキュラムでも以下の5領域を「デザインの対象」と定義しています。

  1. Environment & Sustainability(環境・持続可能性)
  2. Technology Frontiers & AI(テクノロジー・AI)
  3. Governance & Markets(経済・ガバナンス)
  4. Healthcare & Wellbeing(医療・ウェルビーイング)
  5. Culture & Society(文化・社会)

 つまり、CoDが育てたい人材は、文系/理系という境界に縛られず、社会のあらゆる領域に横断的にアプローチできる人材だと言え、この点が、従来の学部とは根本から異なります。

特徴① 文理を越境する“Interdisciplinary(学際)型カリキュラム”

 では、CoDの教育の特徴を見ていきましょう。

 第一の特徴は、従来の大学のように「文系・理系」で分けない、徹底した学際カリキュラムにあります。1年次には「Interdisciplinary Foundations」と呼ばれる基礎的な講義を通して、自然科学・社会科学・人文科学といった広範な分野を横断的に学びます。これは、高校までの“科目ごとに分断された学び”からの脱却を意味しており、複雑な社会課題に取り組むための“広い視野”をつくる段階です。その後、学生は「環境・サステナビリティ」「AI・テクノロジー」「経済・市場」「医療・ウェルビーイング」「文化・社会」という5領域の中から、自分の興味に基づいて学びのパスを設計します。

 つまり、数学も経済も文化も医療も、“全部つながっている”という前提で学ぶための構造が整えられているのです。これにより、単一の専門に閉じず、時代が求める“越境型の学び手”へと成長できるようになっています。

特徴② 5年間を通じた“実践中心のプロジェクト学習”

 CoDの教育の核となるのが、2〜3年次の「Change Maker Projects」、4年次のインターン・フィールドワーク、そして最終年の「Capstone Solo Project」に代表される“実践の連続”です。単に教室で学ぶだけでなく、実際の社会課題をテーマに、企業・行政・国際機関・NPOなどと協働しながらプロジェクトに取り組むことが想定されています。たとえば環境問題であれば地域の行政と連携し、医療であれば病院やヘルスケア企業と協働するなど、扱うテーマは多岐にわたります。

 こうしたプロジェクト学習は、知識を“理解する力”だけでなく、課題を発見し、仲間と議論し、社会に提案し、改善していく力も養います。最終年の「Capstone Solo Project」では、学生自身がテーマを設定し、研究・分析・デザイン・実装のプロセスを一貫して行います。これにより、卒業時点で“自分の手で社会課題と向き合い、解決策を形にする経験”を持つ人材へ育つのです。

特徴③ 全授業英語・世界中から学生が集まる“国際協働環境”

 CoDのもう一つの大きな特徴は、授業のすべてが英語で行われる点です。これは単なる言語選択ではなく、“世界基準の学び方”を実現するための仕組みです。学生の多くが海外から集まるため、教室は常に多様な価値観や文化背景が交差する空間になります。その中で議論し、プロジェクトを進める経験は、日本国内の大学では得にくい国際協働力を育てます。

 また、既存のPEAKプログラムで培われた英語教育のノウハウを引き継ぎつつ、さらに学際性と実践性を強化したのがCoDです。英語で思考し、英語で議論し、英語でアウトプットする環境は、帰国子女や海外経験者にとって大きなアドバンテージとなります。同時に、国内教育のみで育った学生にとっても、世界の学生と肩を並べて学ぶことで視野が開き、自分の将来像を国際的に描く力が身につきます。CoDは、国際社会で活躍するための“言語×学際×実践”を融合した、日本で最もグローバルな学部になるでしょう。

 では次に、どうすればこのCoDに合格できるのか、2つの進学方法について見ていきましょう。これについて、東大のHPでは2つのルートが示されています。

【Route A(国内ルート)で合格するための戦略】

 Route Aは、国内の教育課程を中心に学んできた受験生向けの選抜方式であり、特徴は「共通テストを基盤にした総合評価」です。一般選抜のように“点数勝負”ではなく、共通テスト+英語力+エッセー+面接を総合的に判断するため、幅広い力が求められます。では、どうすれば合格に近づけるのでしょうか。

 まず重要なのは、共通テストでの安定した得点力です。CoDの求める人物像は「文理の壁を越えて学べる柔軟性」であり、科目選択も文系・理系に偏らず幅広い科目が指定されています。これは、単一科目に強いだけでは不十分で、“全体としての学力のバランス”を重視する姿勢の現れです。つまり、共通テストで極端に苦手科目をつくらないことが非常に重要です。

 次に欠かせないのが、英語力のアピールです。授業がすべて英語で行われる以上、英語で考え、議論し、アウトプットできる力は必須となります。英語検定試験(IELTS、TOEFL、英検など)のスコアは提出が求められる方向であり、特にリスニングとスピーキングの実力が面接に大きく影響します。CoDは“英語で学べるかどうか”を非常に重視するため、国内受験生にとって英語力は大きな差別化ポイントです。

 さらに重要なのが、エッセーの質です。エッセーは単なる作文ではなく、「なぜこの学部で学びたいのか」「自分はどの社会課題に関心があり、何を変えたいのか」を論理的に、かつ自分の経験と結びつけて書く必要があります。ここで問われるのは、情報の暗記ではなく “問題発見力・課題設定力・思考の筋道” です。多くの受験生が苦手とするポイントでもあるため、ここに時間をかけて練り上げることが大きな武器になります。

 そして最後に、面接(英語)。CoDの面接は「英語が話せるか」よりも、「自分の考えを構造的に説明できるか」を重視します。社会課題の本質をどう捉えているか、なぜその課題に取り組みたいのか、どのように学んでいきたいのか。これらを自分の言葉で語れるかどうかが勝負です。

 まとめると、Route Aの合格戦略は、
①共通テストの総合的な学力
②英語力
③エッセーによる思考力の可視化
④英語面接での表現力

 の4つを高めることに尽きます。単なる得点力ではなく、総合的な人物像を評価する入試であるため、“幅広い知”と“自分のテーマ”を持つことが、最も大きな武器になります。

【Route B(海外ルート)で合格するための戦略】

 Route Bは、IB校・インターナショナルスクール・海外校で学んだ受験生向けの選抜方式です。特徴は、「国内に来なくてもオンラインで受験できる」「IB・SAT・ACTなどの国際試験が評価の中心」という点で、海外経験者にとって大きなアドバンテージがあります。

 まず鍵となるのが、IBまたはSAT/ACTのスコアです。IBの場合、総合点だけでなく科目ごとのレベル(HL/SL)、Extended Essay(EE)、TOKの評価なども総合的に見られます。CoDの学際性を考えると、特にHL科目がバランスよく選択されていることがプラスに働きます。SATの場合は、Reading/Writing と Math のスコアが軸となり、論理的読解力と基礎的な数学の思考力が直接問われます。

 次に重要なのが、英語力そのもの。Route Bの受験者は英語での教育を受けてきた前提があるため、スピーキング・ライティングは高いレベルが求められます。面接はすべて英語で行われ、「内容の深さ」や「議論の姿勢」まで評価されるのが特徴です。単に英語が流暢というだけでなく、社会課題に対する洞察や、他者との協働姿勢が見られる点が、英語面接における重要な評価軸です。

 そして最も差がつくのが、エッセー(志望理由)。海外教育では、自分の興味関心や社会課題を深掘りする機会が多いため、その経験がそのまま評価に直結します。「自分は何に問題意識を持ち、それをどのように学び、社会にどう貢献したいと考えているか」――これを具体的なエピソードと分析で示せるかどうかが、合否を大きく分けます。

 また、Route Bの大きな特徴として、渡航不要で受験できるという点があります。海外在住者にとっては経済的・時間的なハードルが低く、オンラインで完結するため、海外校の学習と両立しやすい入試方式です。

 総合すると、Route Bで合格するための戦略は、
①IB/SATのスコアの最大化
②英語面接での論理性
③エッセーでの社会課題への洞察
④海外経験を“強みに変える”自己理解

 の4点を磨くことが鍵になります。

 海外経験そのものが強みになるだけでなく、それを「なぜCoDで学ぶ必要があるのか」という文脈に落とし込めるかどうかが、最も重要な合格ポイントとなるのです。

CoDは日本の受験事情をどう変えるのか?

 カレッジ・オブ・デザイン(CoD)の誕生は、単に“新しい学部ができる”という話にとどまりません。これは、日本の大学受験そのものの構図を大きく変える出来事です。実際、2027年以降の進路選択は「東大に行く人のタイプ」が大きく広がると予想されています。ここでは、CoDが受験事情に与える3つの大きなインパクトを解説します。

① 海外大学との併願がしやすくなる

これまで、東大を目指す受験生にとって「海外大学との併願」はほぼ不可能でした。なぜなら、東大の一般入試は二次試験の学科試験に膨大な学習時間が必要で、SATやIBの対策と両立が極めて難しかったからです。

しかしCoDは、

  • 共通テスト(またはIB・SAT)+エッセー+面接
    で合否が決まる仕組みのため、従来の“東大二次の超難問対策”が必要ありません。

これはつまり、
「海外大学を第一志望にしつつ、東大CoDを併願する」という選択が現実的になる
ということです。

ハーバード・UCLA・シンガポール国大・香港大などを目指している層が、「東大を安全校にする」という逆転現象すら起こる可能性があります。これまで日本の受験と海外の受験は完全に別世界でしたが、CoDによって両者が同じラインに接続されるわけです。

② 早稲田国際教養・国際教養大学(AIU)志望層が東大に流れる

次に起こるのが、“進路の逆流”です。

これまで、

  • 早稲田大学・国際教養学部(SILS)
  • 国際教養大学(AIU)
  • 上智大学・国際系
  • ICU(国際基督教大学)

といった“英語で学ぶ系”の大学を志望していた層は、東大との接点がほとんどありませんでした。理由はシンプルで、東大の一般入試は文系・理系ともに高度な日本語の記述力を求めるため、英語系の学びを得意とする帰国子女やインターナショナルスクールの学生は入りづらかったからです。

ところが、CoDは

  • 授業はすべて英語
  • 文理融合
  • 思考力・エッセー・プロジェクト重視
    という、まさに「国際教養大学的な学びの東大版」と言える形。

つまり、
SILSやAIUを第一志望にしていた層が、東大CoDに“流れてくる”未来がほぼ確実です。

これにより、東大の受験生の構造は大きく変化し、
「日本の最難関 × 国際教養 × 文理融合」
というこれまでにない市場が誕生します。

③ アジア圏からの東大進学が一気に増える

CoDの入試は、Route Bを使えば海外から一度も日本に来ることなく受験ができます。これはアジア圏の優秀な学生にとって、東大が“格段に身近になる”ということを意味します。

特に以下の国・地域からの増加が予想されます。

  • シンガポール
  • 香港
  • 台湾
  • 韓国
  • インド
  • マレーシア
  • タイ

これらの地域は、

  • IB教育が普及している
  • SAT受験率が高い
  • 英語で授業を受ける大学が多い
    という共通点を持っています。

つまり、
「今の学び方のまま、東大CoDに入れる」
という状況になるのです。

実際、アジアのトップ学生にとって東大は

  • 名声
  • 研究環境
  • キャリアの強さ
    のどれをとっても魅力的であり、日本語を必要としないCoDは非常に相性が良いと言えます。

結果として、
東大のキャンパスはこれまで以上に国際色が強くなり、日本の大学における競争環境そのものが変化していく
ことが予想されます。

まとめ

 東大は今、大きく変わろうとしています。PEAKを終了し、CoDへとステージを移すことで、世界基準の教育に踏み出しました。これからの東大に求められるのは、知識の多さだけでなく、「問いを立て、未来をつくる力」を備えた人材。CoDは、その最前線にある学部です。

 もしあなたが、「英語を活用しながら、社会をもっと良くしたい」「分野横断的に学びたい」「世界で活躍できる力を東大で身につけたい」と思っているなら、CoDは間違いなく挑戦する価値のある場所です。