日本での医者への切符は、18歳の時の偏差値で大きく決まる。
しかし、本当にその方法だけで、「良い医者の資質」を見極められているのでしょうか?
医学部入試といえば大学受験の最難関。
実際に、医療への関心が薄くても「頭が良いから」「偏差値が高いから」と、ステータスや難問攻略を目的に進路を選ぶケースも少なくありません。
逆に、「本気で医師になりたい」と願っても、 高校入学後すぐに勉強に本腰を入れなければ“手遅れ”になってしまうことも。
そんな現状に対して、「誰にでも医師への道を開く」という理念を掲げているのがハンガリーの医学部。
「受験で求められる能力が高い人だけしか、医師になれないわけではない。」と語ります。
日本の入試が重視するのは数学や記憶力といった“医学部に入るための勉強”。
一方で、ハンガリーの入試は医学を学ぶだけの基礎があるかの判断です。入学後の医学の勉強で医師としての適性を判断します。
入学試験では、理科科目と英語力とコミュニケーションを重視し、数学を課さないユニークな制度を採用しています。
本記事ではハンガリー医科大学事務局から直接、入試制度の狙いや背景にある思いについて伺いました。
※ハンガリー医科大学事務局とは
ハンガリー国立大学医学部の理事長、学長、プログラムディレクターが理事として参画し設立された公式団体。ハンガリー国内にある4つの国立医科大学へ日本人学生の入学試験を実施する。また、渡航~卒業後の日本の医師国家試験の取得までの学習相談や現地での生活の相談、支援も行う。
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穴場な入学環境
—-日本とハンガリーの入試の違いについて教えて下さい
まず、日本の医学部入試はイメージ通り、ペーパー試験の比重が高いです。英語・数学・理科が必要な大学が多く、国立では共通試験も加味されます。もちろん、面接や小論文が実施される場合もありますが、配点は比較的軽い。
しかし、今の医学部入試には大きな問題があると思うんです。それは、医学部の難易度が高すぎるんです。それだと、単に難易度が高いゲームを攻略したいという人も入ってくる。だから、高校1年生から医師を目指さないと、受験勉強に間に合わない。ましてや、文系を選択したあとで医学部に興味をもった、なんて場合には、現役で合格するのは絶望的です。
また、受験と大学の専門との関連が薄いこと。例えば、受験では数学が重視されますが、入学後はほとんど使われなかったりします。つまり、医学部の入試では、受験時点の学力を測っているに過ぎず、これだけでは本当に良い医師になる資質を判断することはできないと我々は考えています。
—ではハンガリーはどのような入試を行っているのでしょうか
理科系科目の筆記試験と英語での口頭試問です。
大きな特徴は数学が不要なこと。文系出身でも、英語力と理科への理解があれば合格可能です。
口頭試問は「人体の消化の機能について説明してください」といった課題に答える形で、教授がさらに質問を重ねる“対話型”。
一方通行の試験ではなく、「考えながら説明する力」「相手に伝える力」を重視しているため、教授が解答に近づくヒントを出してくれたりもします。そのため、コミュニケーション能力や探究心を評価する傾向が強いんです。
このような形式のため、医者になりたい気持ちと最低限の学力があれば、ハンガリー医学部に合格することはできる。
加えて、理科や英語の学力が足りない高校生に対して、予備コースという医学部0年生のような大学附属型のコースもあるんです。 理科科目は日本の共通テストだと60~70%程度の得点ができれば合格できます。
英語と理科を1年間現地で学び、その後通常と同様にハンガリーの医学部に入学し、合計7年で卒業を目指します。予備コースから医学部への進学率は95%以上です。
このため、「浪人しても医学部に入れる保証はない」「浪人して医学部に入るための勉強をするのであれば、1年間勉強して医学部に入学できるハンガリーに行く」という学生も多くいます。
予備コースに限らず、本コースも日本の医学部受験の結果が出た後に受験ができる。だから、日本の医学部受験で思うような結果が出なかった方々、海外で活躍する医師も視野に入れていた方々の選択肢になっています。ただし、逃げの姿勢でうまくいくほど医学部は甘くない事は改めて強調しておきます。
–学費について教えてください
日本人が対象となるハンガリー政府奨学金の制度が整っていて、過去10年間で申請者のうち20%くらいの学生が奨学金を得られた実績があります。
授業料全額免除に加え、生活費の一部(月3万円程度)の補助と非常に手厚い中でこれだけ受給率の高い奨学金は日本にはありません。
大学によって異なりますが、平均的な学費と生活・住居費込みで年間およそ400~450万円、6年間で総額約2,400〜2,700万円程度です。
日本の私立の医学部であれば、学費だけで平均的には3000万円ほど。海外であれば、アメリカの医学部が1億円近くなので、生活費を含めても圧倒的に安いんです。
ハンガリー政府奨学金だけでなく、日本の奨学金が使える場合もあります。
茨城県では、ハンガリー医学部の卒業生のおかげで海外医学部生を対象とした奨学金ができたんです。
県が病院の視察を行なったときに、英語が話せてチームでも積極的に動く若手医師がいると話題になったんです。そのドクターがハンガリーの医学部の出身だということが、日経メディカルに取り上げられて、それが知事の目に留まった。最終的には、茨城県が海外大学医学部に通う学生向けの奨学金制度を作るに至ったんです。
また、最近では「国公立大学の合格を辞退してハンガリーへ進学する」学生も増えています。国公立大学に合格した学生は事務局の特待生として受け入れられ、重ねてハンガリー政府奨学金も受給となった場合、日本の国公立医学部に進学するよりも費用を抑えてハンガリー医学部に進学することができます。
日本で医師として働く
—-卒業後の進路について教えてください
現状90%以上は日本の病院に就職します。最初から日本で医師として働くことを目標に入学する学生が多いというのも、大きな理由の一つだと思います。最近はハンガリーの医学部の知名度も上がってきていて、東京大学、東京科学大学病院など、都会の有名病院に就職する学生もいます。
ただ、最近ではハンガリーの医学部を卒業して、そのままEU圏で働く卒業生も増えてきています。つまり、海外で働くという選択肢と国内に戻るという二つの選択肢が取れる。これはハンガリーならではのことです。
また、日本で就職したからといって、海外への道が閉ざされる訳ではないんです。
むしろ、日本で専門性を身につけてから海外で働くという方もいます。
※海外でのキャリアについては次の記事へ
ただ実際は、日本で働き続ける人が多いです。理由はライフステージ。
医者は一人前になるまでが長いんです。現役合格で大学をストレート卒業して医師になった時点で25歳。研修医が終わって27歳。専門医を取るタイミングが30代の前半。ここまでを日本で過ごすとなると、その間に結婚、更には出産を経験する先生が多い。家庭を持った上で海外へ行くとなると、やっぱりハードルは上がってしまいます。
まとめ
受験時点の学力が重視され、医学部の合否が決まる現在。しかし、入試で重視される数学などの学力と、医療現場で本当に求められる能力との間には、大きな乖離があります。現行の入試制度だけで、果たして「良い医師の資質」を見極められているのか。
ハンガリー医科大学事務局はこう語ります。
「ハンガリーでは、とにかく“医師になりたい”という気持ちのある学生を応援しています。『医学部に入るための勉強』だけではなく、他の素質を評価する医学部も必要ではないでしょうか。日本の医学部ももちろん素晴らしい。ただ、日本の82校と並べて“83校目の医学部”としてハンガリーを考えてもらえたら嬉しいです。」
ハンガリーの医学部は、医師としてのキャリアの扉を開く“83校目”の選択肢。入試には数学がなく、文系出身者にも広く門戸が開かれています。在学中には英語での医療教育だけでなく、異文化を乗り越える協調性や自己管理能力を育むことができます。
偏差値を重視する日本の受験構造の中で、「医師になりたい」という純粋な想いを持つ受験生に手を差し伸べる存在。それが、ハンガリーの医学部なのかもしれません。

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