「選択肢がない」中で見えた構造的問題とは

 先日掲載した「田舎者のママは私立小学校に行ってはいけない」「私立小学校の闇」の記事に対し、多くの反響をいただいた。その中で、実際に地方の私立小学校の「現実」を体験し、最終的に公立小学校に転校した保護者から取材協力の申し出があった。

「通わせていた地方の私立小では、先生が辞めるたび、次の先生の”質”がどんどん悪くなるという悪循環が起きている」

 今回お話を伺うのは地方の私立小学校にお子さんを通わせた経験をお持ちのすぐるさん。東京などの都市部とは大きく異なる「地方・私立小学校の現実」が浮き彫りになった。選択肢が限られた中で、保護者は難しい判断を迫られている。

【日本の地方・私立小学校事情】

文科省「学校基本調査」(令和6年度)によると、全国約605万人の小学生のうち私立在籍は約8万人(1.3%)にすぎない。少子化で公立の選択肢が減る地方では私立児童はさらに希少だ。

それでも私立小を選ぶ家庭は、少人数制できめ細かな指導や安心できる学習環境を重視する傾向が強い。2025年6月の全国保護者調査では「子どもの成長への期待・不安」(58.3%)と「安心できる環境」(55.1%)が主な動機に挙がり、通学バス・特色教育・将来の進学サポートを評価する声も根強かった。

医師や自営業など地元で職に就く保護者が「唯一の選択肢」として経済負担を承知で在地の私立に通わせるケースも珍しくない。

信じられない教師の実態

――最終的に転校を決意された決定的な理由は何でしたか?

すぐるさん:ある学年になったときの担任が、あまりにもひどかったんです。これは本当に信じられない話なのですが、私立小学校の先生が、その学年の漢字が書けないんですよ。

――それは...ほかにも同じようなことがあったんですか?

すぐるさん:授業参観で親に筆順を間違えて披露してしまったり、子どもの宿題や連絡帳に間違った漢字を平気で書いてくる。私たちが体験しただけでも一回や二回じゃありません。他の親御さんも同じような体験をされていて、子どもの前でも間違いを連発していました。

こんな言葉を使いたくないですが、いわゆる「Fラン」大学出身の方。やっぱりそういう教師の仕事をやるのには向いてない方なんだと思います。

――学校側に相談はされましたか?

すぐるさん:もちろんしました。でも結論から言うと、担任は変えられないと言われました。

要は、人が不足しているんです。少なくともその学校では、新規採用で教師が全く採れない状況で、だからクビにもできない。一定の頭数は学校運営のために必要で、教師免許があれば誰でも用意しなければいけないという実態があります。

 

中学年で見えてきた問題

――問題が見えてきたのはいつ頃からでしたか?

すぐるさん:中学年になってから、先生の質にばらつきがあることが分かりました。学校が教育方針として定めたカリキュラムはしっかりしているのですが、それを先生がちゃんと指導の内容に意図を踏まえて盛り込めるかは全く別の話なんです。

やたら宿題が出て、ついていける子はいいのですが、当然ついていけない子もいる。学年が上がるにつれて、子どもたちにもかなりストレスがかかっているのが見えてきました。

――具体的にはどのような問題が?

すぐるさん:ちょっとしたケンカやいじめが日常茶飯事なんです。特に高学年の子はしょっちゅう低学年の子をいじめていたようです。

私見ですが、これは勉強のストレスと親からのプレッシャーが原因だと思います。私立小に通わせる親は教育熱が高い。お医者さんの子どもたちや自営業で社長さんの子どもたちなど、小さい時から「勉強しなければ」と刷り込まれている子が多いんです。

 

なぜ私立小学校を選んだのか

――そもそも、私立小学校を選ばれた理由を教えてください。

すぐるさん:地方なので、そもそも私立小学校の選択肢はそれほど多くありません。私立小に進学する子の割合は、東京などと比べれば無視できるレベルです。基本的には公立小学校に進学するのが当たり前という地域ですね。

うちの場合は、子どもの友達が行くということと、見学に行ってすごく気に入ったことが決め手でした。公立に対してマイナスイメージがあったわけではなく、そこまで詳しく調査したわけでもありませんでした。

――最初の印象はいかがでしたか?

すぐるさん:低学年の時は非常に良かったんです。授業内容も先生も良かった。カリキュラムも伝統的にしっかりしていて、進学実績も地域のトップ高校への合格者が多く出ています。

まあ、あれだけ勉強させればという気もしますが(笑)。

 

転校後に見えた違い

――学校への違和感が募り、その後公立小に転向されたんですよね。転校されて、変化はありましたか?

すぐるさん:勉強面では緩くなりましたが、それ以外の面はすごく良くなりました。何より、子どもらしくなったんです。

転校して分かったのですが、子どもたちの顔つきが違うんです。私立時代はギスギスした感じでした。親からのプレッシャーと学校での大量の宿題で、かなりストレスがかかっていたんだと思います。

私立小時代、転校する直前の学期は半分近く休んで不登校に近くなっていたのですが、公立に転校してから一学期は一日も休んでいません。

 

地方私立小学校の構造的ジレンマ

――地方の私立小学校が抱える根本的な問題は何でしょうか?

すぐるさん:公立小学校は以前に比べて結構良くなっていると思います。働き方改革も進んでいますし。でも「公立イコールダメ」という思い込みが、私立小を選ぶ親のなかにはあるんじゃないでしょうか。

私立に行ったようないじめの話は、公立では一切ありません。

1学年40人程度と、人数が少ない私立の方が、むしろそういうトラブルが多かったように感じます。月に一回は何らかのトラブルが起こっていましたから。どう考えても公立よりは多いなと思います。

私見ですが、私立小学校には、まず規模の問題があります。1学年40人程度という小規模では、学校運営に必要な一定数の教師を確保するのが精一杯。質を選んでいる余裕がないのが保護者から見ていても感じました。

少子化の影響で在籍生徒数も長期的に見ると減少傾向にあり、運営がきつくなっている。先生に還元できるものも少なくなって、さらに質が下がるという悪循環に陥っているように見えますです。

東京の私立のように大学の附属校で経営母体がしっかりしているところとは全く事情が違います。ただ、公立に進学させないと決めても、とはいえ、地方の私立小を選ぶ余地はほぼなく、そのような私立小を避けるのも難しいのが現状だと感じます。地方では県内の私立小学校の選択肢もそれほどありませんから。

――それでも良い点もあったとお聞きしましたが。

すぐるさん:カリキュラム自体はしっかりしています。ついていける子にとってはいい環境だと思います。周りに賢い子が集まっているという意味での勉強環境はありますし、教育熱心な親御さんが子どもを通わせているのは間違いありません。

ただ、先生の当たり外れが激しいのと、その外れを引いた時に我慢できるかどうかという問題があります。

うちは大外れでした。


この記事は実際の体験に基づいていますが、プライバシー保護のため一部の情報は変更しています。