「違いを共に生きる」——愛知淑徳大学が総合型選抜で見ているもの
幅広い学部・学科(専攻)を擁し、近年も教育学部や建築学部、数学・情報分野の教員養成に関わる専攻を相次いで設置してきた愛知淑徳大学。大学の理念として掲げるのは、「違いを共に生きる」だ。その言葉は、総合型選抜の名称にも使われている。
愛知淑徳大学は、総合型選抜で受験生の何を見ているのか。そして、年内入試で合格した学生は、入学後にどのように成長しているのか。星が丘キャンパスで、入試広報のご担当者にお話を伺った。
二つのキャンパス、それぞれの「学びの顔」
愛知淑徳大学には、長久手と星が丘の二つのキャンパスがある。
「長久手は各分野の学びや研究を支える施設・設備が整っていて、医療系や建築など、資格取得や将来の目標を見据えて入学する学生が多い印象です」
一方、星が丘キャンパスでは、人や社会とつながる実践的な学びを重視しているという。
「フィールドスタディやアクティブラーニングに力を入れているので、好奇心が旺盛で、新しいことにチャレンジしたい学生が多いですね。一つの学部に何百人もの学生がいる大学と比べると、教員との距離はかなり近いと思います」
星が丘キャンパスの3学部では、2027年4月から、学部の枠を越えて科目やゼミナールを選べる「学びのクロスオーバー」が始まる予定だ。特徴的なのは、他学部の開放科目を履修するだけでなく、ゼミナールを含めて横断的に学べる点だ。
「自分の専門分野を学びながら、他学部の科目も履修できるため、一人ひとりが自分らしい学びを組み合わせることができます。そうした学びを通して、幅広い視点や自分ならではの強みを身につけ、それぞれの将来につなげてほしいと思います」社会の変化や新たな人材需要に応じ、学部・学科(専攻)の新設も続けてきた。情報科教員の不足や、臨床検査技師をはじめとする専門職への需要などを踏まえ、必要とされる学びを素早く形にしてきたという。
大学理念「違いを共に生きる」は、1年次の必修授業から始まる
愛知淑徳大学を語るうえで欠かせないのが、理念として掲げる「違いを共に生きる」だ。男女共学化を機に掲げられ、約30年にわたって受け継がれてきた。
特徴的なのは、その理念が単なる標語ではなく、実際の教育に組み込まれていることだ。1年次には、全学生を対象とした必修科目「違いを共に生きる・ライフデザイン」が設けられている。オムニバス形式でさまざまな分野の専門家が登壇し、学生が社会に存在する多様な「違い」について考える。「どの学部の学生に聞いても、この授業はよかったという声が多いんです」
医療職を目指すある学生は、授業を通して、「ただ相手をサポートするのではなく、その人の立場に立って考えること、違いを理解することから始めなければならないと気づいた」と語ったという。
また、ビジネス分野を学ぶ男子学生は、子育てをテーマにしたグループワークで、男女が同じ教室で意見を交わした経験から、「一つの立場からだけでは見えないものがある」と感じたそうだ。社会に出れば、異なる価値観や背景を持つ人と関わることになる。
しかし、そうした違いについて、正面から話し合う機会は決して多くない。在学中からそのテーマに向き合う授業が設けられている点に、理念を教育へ落とし込もうとする大学の姿勢が表れている。
キャリア教育も、全学的に制度化されている。名称や内容は学部・学科によって異なるものの、自身の将来やキャリアについて考える科目が必修として組み込まれているという。卒業生を授業に招き、大学での学びと卒業後の仕事とのつながりを聞く機会も設けられている。

「やりたいことが決まっていない」人こそ、学びに触れてほしい
こうした多様な学びを、大学はどのような高校生に届けたいと考えているのだろうか。ご担当者は次のように話す。
「これまで生きてきたなかで、やりたいことが決まっていない人こそ、本学の学びに触れてほしいんです。たくさんの学びやフィールドがあることを伝えたいですね」
高校生が大学の学びに触れる入口の一つが、夏に開催される高校生向け講座だ。なかでも心理学の講座は人気が高く、例年200名を超える高校生が受講している。今年度は心理学部のほか、創作表現専攻、食創造科学科・応用生物学部、また、星が丘キャンパスでは3学部合同の高校生講座も開催しており、一日で複数の学部の講座を受講することが可能だ。
「第一志望でなくても、ぜひ来てほしいですね。さまざまな学びに触れるなかで、自分に合った分野や将来の可能性を見つけるきっかけにしてもらえたらと思います」

総合型選抜は3方式。「まずは学科・専攻適性入試から」
愛知淑徳大学では、総合型選抜として三つの方式を設けている。
一つ目は、大学の理念を名称に掲げた「大学理念・違いを共に生きる入試」だ。プレゼンテーションを中心に選考が行われる。
二つ目の「活動実績入試」では、高校時代の活動実績や、所定の資格などが出願要件となる。意欲だけではなく、高校在学中に積み重ねてきた具体的な活動や成果が求められる方式だ。三つ目の「学科・専攻適性入試」は、一般的な学力試験ではなく、入学後の専門教育に対する適性を問う学科専攻別適性試験が課される。三つの方式は、いずれか一つだけを選ばなければならないわけではない。試験日程が異なるため、条件を満たしていれば、同じ学科・専攻を複数の方式で受験できる。
そのなかで、ご担当者が高校生に着目してほしい方式として挙げるのが、学科・専攻適性入試だという。
「募集人員が最も多く、ほかの方式と比べて倍率も低い傾向があります。そのため、本学の出願を考えている高校生には『まずはこの方式を受けよう』と伝えています。そのうえで、資格や活動実績があるなら活動実績入試にも出願する。プレゼンテーションが得意なら、大学理念・違いを共に生きる入試にも挑戦する、という考え方です」
学科・専攻適性入試は、一般入試とは異なる形で、面接や思考力を生かして挑戦したい受験生にとって選択肢の一つとなる。
一方で、定員の少ない学科や人気の高い学科では、入試方式ごとの募集人員も多くないため、出来るだけ早めの受験をおすすめしたい。
「志望度が高ければ、早めに準備を始めてほしいんです。受験のチャンスを取りこぼしてほしくありません」
合格後も、学習が終わるわけではない。総合型選抜の合格者には、入学前教育が課される。高校までの教科内容をオンラインで学習するもので、全問正解するまで取り組む。誤答すると別の問題に差し替わる仕組みになっており、入学まで大学での学びの土台となる基礎学力を確認する。総合型選抜で合格した学生の学力をどのように支えるかという課題に対し、入学前教育を制度として設けている。
年内入試で入学した学生は、大学でどう伸びているのか
「一般入試で入学した学生のほうが、入学時点の学力は高いのではないかと言われることもあります。しかし、入学後の様子を見ると、必ずしもそうとは言えません」
年内入試で入学した学生には、志望する学科で学びたいという意思を強く持っている人が多く、入学後も意欲的に学ぶ傾向が見られるという。
高校時代に探究学習や企業との連携活動に取り組んできた、総合学科や商業科出身の学生が、学部の活動で中心的な役割を担うこともある。
卒業時のアンケートでも、大学生活への満足度は高いという。その理由として挙げられるのが、「教員との距離の近さ」や「人間関係の良さ」だ。
取材当日、駅からキャンパスへ向かう道でも、すれ違う学生同士が明るく声をかけ合う姿が見られた。ご担当者の言葉だけではない、大学の日常の空気を感じる場面だった。

高校の先生方へ——「とにかく早めに準備を」
総合型選抜の面接では、志望理由や将来目指していること、その実現に向けて大学4年間で何を学びたいのかなどが問われる。
愛知淑徳大学で何を学びたいのかを、自分の言葉で説明できることが重要になる。「とにかく、早めに準備を始めてほしいです。本学にはもう一つの年内入試である公募制推薦入試があります。公募制推薦入試で問われる基礎学力は、比較的早い学年で学ぶ範囲が中心です。一般入試よりも試験範囲が狭いため、そこで力を発揮できるようにしようと高校生には伝えています」
約30年前に掲げられた「違いを共に生きる」という理念は、多様な背景や価値観を持つ人々が共に暮らす現在の社会において、いっそう重要性を増している。
多様な学部・学科、多様な入試方式、そして多様な学生たち。
愛知淑徳大学が用意しているのは、すでに目標を決めている人だけの場所ではない。まだ進みたい道が決まっていない人が、さまざまな学びに触れながら、自分の関心を見つけていくことのできる場所でもある。





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