2026年10月25日、早稲田大学国際教養学部(SILS)の2027年度AO入学試験(4月入学・国内選考)が実施されました。

今年度も面接は実施されず、英語による「Critical Writing(120分)」と日本語による「志望理由に関するエッセイ(30分)」の筆記試験が行われました。

英語試験では、気候変動が高齢者に与える影響を扱った学術論考や、アイルランド出身のロックギタリストの伝記が題材となりました。さらに日本語エッセイでは、13世紀のパリ大学における学問の自由と知識の確実性をめぐる歴史的な命題が提示され、受験生自身の学問観が問われました。

未来図編集部が独自に入手した実際の試験問題と受験生の報告をもとに、問題概要や出題傾向、リザプロ株式会社推薦対策事業部が想定する回答の方向性をお伝えします!

 

問題概要

試験構成(当日の流れ)

2027年度のAO入試では、出願者全員を対象として書類審査と筆記審査が実施されました。筆記試験は、英語によるCritical Writingと、日本語による志望理由に関するエッセイの2部構成です。

受験生の報告によると、当日は以下の流れで進行しました。

時刻

試験内容

12:30

受験室入室

12:40頃

試験説明開始

13:02〜15:02

Critical Writing(120分)

15:40〜16:00

休憩

16:00〜16:20

説明・問題用紙配布

16:20〜16:50

志望理由に関するエッセイ(日本語)

17:00頃

解散

※時刻は受験生からの報告に基づくものであり、大学が公表する標準的な試験時間とは異なる場合があります。

 

出題内容

① 気候変動と高齢者の社会的脆弱性(英文読解・語彙・文法問題)

科学誌『Nature Human Behaviour』に2026年1月29日付で掲載された論考「Climate Change Adaptation Must Consider Older People(気候変動への適応には高齢者への配慮が必要)」をもとにした英文が出題されました。

本文では、気候変動による災害や異常気象に対して、高齢者が置かれる社会的・経済的な不利な状況が取り上げられています。

具体的には、社会的孤立、経済的困窮、デジタルデバイド(情報格差)などが、高齢者の気候変動への適応を妨げる要因として指摘されました。

設問では、本文中の空欄16か所について、文脈に適した語句や文法表現を選択する問題が出題されました。

 

② 人間を人間たらしめる固有の性質とは何か(Critical Essay 1)

受験生の報告によると、人間とほかの動物を区別する特徴について、少なくとも2つの性質を取り上げ、それらが人間らしさを十分に示しているかを論じる問題が出題されました。

自身の経験を具体例として挙げながら、英語で議論を展開することが求められました。

単に人間の特徴を列挙するのではなく、それらが本当に人間だけに固有のものなのかを検討する必要があります。

 

③ 職業に対する固定観念に従うべきか(Critical Essay 2)

アイルランド出身のロックギタリスト、ロリー・ギャラガーの伝記が題材となりました。

ギャラガーは、一般的なロックスターに見られる派手な生活様式とは異なり、私生活では控えめで謙虚な人物として描かれています。

この人物像を踏まえ、次の趣旨の問題が出題されました。

「人々が自分の職業に対するステレオタイプに従わないことは望ましいのか。例えば、大学教授になった人は、典型的な大学教授らしい服装や振る舞いをすべきなのか」

職業上の役割と個人の自由、社会的期待、専門職に求められる信頼性などを関連づけながら、理由と具体例を挙げて英語で論述することが求められました。

 

④ 13世紀のパリ大学における学問の確実性と大学の存在意義(志望理由に関するエッセイ)

日本語エッセイでは、1277年にパリ司教エティエンヌ・タンピエが大学教育から排除されるべき誤った命題として指定した219の命題のうち、第37命題が提示されました。 

その内容は、次のようなものです。

「おのずと明らかであるか、あるいはおのずと明らかな事柄から証明されうるのでない限り、何も信じられるべきではない」

この命題を踏まえ、以下の3問が出題されました。

 

  • 設問1: 自明な事柄、あるいはそれらから証明できるものだけを確実とする学問と、そうではない学問には何があるか。中学卒業以降の学習経験を踏まえて説明する。
  • 設問2: SILSで学びたい学問分野について、自明な事柄から証明できないものを、どのような方法で検証する必要があるかを具体的に説明する。
  • 設問3: 第37命題のような主張が、大学での学問にとって有益か有害かを、論拠とともに述べる。

いずれも日本語での記述が求められました。

 

用語解説:Critical Writingとは?

SILSのCritical Writingは、英語の文章を正確に読み取り、設問に応じて自らの考えを論理的に表現する力を測る筆記試験です。

単なる英語力の確認ではなく、社会問題や学術的な議論を理解し、根拠に基づいて主張を構築する能力が求められます。

特に今回の出題では、次の3つの能力が重要だったと考えられます。

  • 英文読解・語彙運用力: 学術的な英文の論旨を理解し、文脈に適した語句や文法を判断する力
  • 批判的思考力: 一般的に正しいと思われている価値観や固定観念を問い直し、異なる立場から検討する力
  • 論理的表現力: 自分の主張に対して理由や具体例を示し、反論も考慮しながら説得力のある文章を構成する力

今回の試験では、気候変動、職業倫理、学問の歴史など、特定の教科の知識だけでは対応しにくい分野が取り上げられました。

そのため、日頃から幅広い分野の文章に触れ、社会問題を複数の視点から検討する練習が重要だと考えられます。

 

関連すると思われる社会問題

① 気候変動と高齢化社会:災害対策は誰を基準に設計されているのか

今回の英文では、気候変動がすべての人に同じ影響を与えるわけではないことが指摘されました。

例えば、猛暑への対策として冷房の使用が推奨されても、低所得の高齢者にとっては電気代が経済的な負担となる場合があります。

また、スマートフォンを通じた避難情報の配信が普及しても、デジタル機器の使用に慣れていない高齢者には情報が十分に届かない可能性があります。

つまり、社会全体にとって効果的に見える政策でも、特定の人々を取り残してしまう危険性があるのです。

日本でも高齢化の進行や自然災害への備えが重要な課題となっています。今後は災害対策の技術的な発展だけでなく、年齢や経済状況によって異なる人々のニーズをどのように政策へ反映するかが問われます。

 

② 職業とステレオタイプ:社会的な信頼と個人の自由は両立できるのか

ロリー・ギャラガーの伝記を題材とした問題は、職業に対する社会的期待と個人の自由の関係を考えさせるものでした。

例えば、医師には白衣、弁護士にはスーツ、大学教授には落ち着いた服装といったイメージが存在します。

こうした服装や振る舞いは、専門職としての信頼性を高める一方で、個人の表現の自由を制限する可能性もあります。

近年は職場での服装の自由化や多様性の尊重が進む一方、医療や教育などの専門職では、一定の規範が必要とされる場面も存在します。

今回の問題では、単純に「個性を尊重すべき」「職業にふさわしい服装をすべき」と結論づけるのではなく、職業の機能や社会的責任に応じて、どこまで規範が必要なのかを考察する姿勢が重要だったと考えられます。

 

③ 学問の自由と知識の確実性:証明できないものに価値はないのか

日本語エッセイで取り上げられた1277年のパリ大学における命題の排除は、宗教的権威と理性的な学問探究の緊張関係を考えるきっかけとなる歴史的事件です。

今回の設問で特に重要なのは、「確実な知識とは何か」という問いです。

例えば数学では、公理や定義をもとに論理的な証明を行います。一方、歴史学では過去の出来事を直接再現することができないため、史料の比較や批判的な検討を通じて、より妥当な解釈を導き出します。

政治学や社会学でも、人間の行動を数学的な証明だけで説明することは困難です。統計調査、インタビュー、歴史的な資料の分析など、複数の方法を組み合わせて研究が行われます。

こうした違いを理解することは、学問分野を横断して学ぶリベラルアーツ教育とも深く関係しています。

今回の出題は、受験生が何を学びたいのかだけでなく、「そもそも学問とは何か」「自分が学びたい分野では、どのように知識が生み出されるのか」という、より根本的な理解を問うものだったと考えられます。

 

理想回答の一例(方向性)

Critical Essay 1(人間固有の性質)

人間の特徴として「言語による意思疎通」と「道具の使用」を挙げ、それらが文化や社会の発展にどのようにつながっているのかを論じる構成が考えられます。

例えば、人間は言語によって複雑な概念を他者と共有し、知識を世代間で継承することができます。また、道具を生み出し、それを改良しながら環境に適応する能力も発達させてきました。

ただし、動物にも一定のコミュニケーション能力や道具の使用が見られるため、それらが人間だけに固有の性質であると断定することは困難です。

そのため、個別の能力の有無ではなく、複数の能力を組み合わせ、知識や文化を蓄積・発展させる点に人間の特徴があると論じる方向性が考えられます。

また、設問では自身の生活経験を用いるよう求められているため、学校での共同作業や異文化交流など、具体的な経験を根拠として示すことが重要です。

 

Critical Essay 2(職業の固定観念)

職業上のステレオタイプに従う必要性は、その規範が持つ実質的な役割によって判断すべきだと論じる構成が考えられます。

例えば、医療現場では衛生管理や安全性のために一定の服装規定が必要ですが、大学教授が必ずしも伝統的な服装や振る舞いをする必要はありません。

大学教授にとって重要なのは、外見が一般的なイメージに一致していることではなく、専門知識や研究能力、学生に対する教育姿勢であると考えられます。

一方、職業上の服装や振る舞いが、周囲の信頼や職業意識の形成に寄与する場合もあります。

そのため、職業上の規範を一律に否定するのではなく、職務に必要な規範と、根拠の乏しい固定観念を区別することが重要です。

 

志望理由に関するエッセイ(学問の確実性)

今回の日本語エッセイでは、「何を確実な知識とみなすのか」という認識論的な問いを通じて、学問ごとに異なる研究方法への理解が問われました。

数学のように公理や定義をもとに論理的な証明を行う学問がある一方、歴史学や政治学、社会学では、史料の分析や統計調査、インタビューなどを通じて研究対象を検証します。

こうした研究方法の違いを踏まえ、受験生自身がSILSで学びたい分野において、どのように知識の妥当性を確かめるべきかを説明することが求められました。

また、第37命題への賛否を問う設問は、厳密な証明が難しい対象を学問から排除すべきなのかという、学問の可能性と限界を考えさせるものでした。

特定の知識を暗記しているかではなく、学問の前提を問い直し、自らの研究関心と結びつけて論理的に考える力が重視されたと考えられます。

 

※本記事は、未来図編集部が独自に入手した試験問題および受験生の報告をもとに作成しています。出題内容の分析と理想回答の方向性は編集部による考察であり、大学が公表した採点基準や模範解答ではありません。