2026年10月17日、早稲田大学創造理工学部建築学科の2027年度入学者向け早稲田建築AO入試が行われました。未来図編集部が独自に入手した入試問題と受験生の報告をもとに、試験の概要や出題意図、リザプロ株式会社推薦対策事業部が想定する回答の方向、面接の内容などをお伝えします!
問題概要
当日は、午前10時から12時までの120分間で筆記試験が行われ、その後、午後に集団面接と個別面接が実施されました。
筆記試験では、「地球が太陽系内を航行する一隻の宇宙船だったら」という架空の設定をもとに、その内部構造を想像して描く課題が出題されました。
第1問では、私たちが暮らす地球を巨大な宇宙船と捉え、その外皮上での生活を支える内部の仕組みを自由に構想し、鉛筆を用いたフリーハンドの描画で表現することが求められました。現実の地球科学に基づくマントルや核などの構造にとらわれず、独自の発想によって宇宙船の内部を設計することが条件とされました。
第2問では、第1問で描いた作品に関連する文章を320字以内で記述することが求められました。単に描いた内容を説明するのではなく、絵画表現と文章を組み合わせることで、より独創的な表現にすることが期待されています。
今回の試験で特徴的だったのは、建築物そのものではなく、地球を一つの巨大な生活空間として構想させる点です。与えられた条件をそのまま再現するのではなく、暮らしを支える仕組みを自ら考え、それを視覚的・言語的に表現する力が問われたと考えられます。
用語解説:「スペキュラティブ・デザイン」とは
スペキュラティブ・デザインとは、現実に存在する問題の解決策を考えるだけでなく、「もし世界がこうだったら」という仮説を立て、未来の社会や暮らしのあり方を問い直すデザインの考え方です。
一般的なデザインが既存の課題を解決することを重視するのに対し、スペキュラティブ・デザインでは、架空の状況を設定することで、普段は当然だと思っている社会の仕組みや価値観を見つめ直します。
例えば「もし地球上のすべての建物が移動できるようになったら」という仮説を立てれば、都市のあり方や土地の所有、地域社会の形成など、従来の建築では考えにくかった問題を検討できます。
今回の課題も、地球が宇宙船であるという架空の設定を通じて、人間の生活を支える空間や仕組みを根本から考え直す点で、こうした思考方法と関連づけて捉えることができます。
関連すると思われる社会問題
今回の試験内容から読み取れる関連社会問題として、地球環境の持続可能性と、限られた資源の中で人間の生活を維持するための建築のあり方が挙げられます。
地球を一隻の宇宙船として考えた場合、そこに暮らす人々は限られた空間や資源を共有する乗組員だと捉えることができます。水や空気、エネルギーを無制限に使用できないという条件は、現在の地球が抱える環境問題とも共通しています。
例えば宇宙船の内部に、人々の生活を支える水の循環装置やエネルギー供給施設が存在すると仮定すれば、それらをどのように配置し、維持するのかが重要になります。
現実の建築でも、省エネルギー性能の向上や再生可能エネルギーの活用、水資源の再利用など、環境負荷を抑えながら快適な生活空間をつくることが課題となっています。
また、人間の生活を成立させるのは建物だけではありません。交通や通信、物流、公共施設、人々が交流する場所など、複数の要素が相互に関係することで都市が機能しています。
今回の設問でも、宇宙船の内部にどのような施設を設けるかという発想だけでなく、それぞれの施設がどのようにつながり、外皮上の人々の生活を支えているのかを考えることが、独創的な作品につながると考えられます。
理想回答の一例
① テーマ理解
この課題では、地球を宇宙船として捉え、その内部にどのような仕組みが存在すれば人々の生活が成立するのかを想像することが求められている。重要なのは、奇抜な装置を描くこと自体ではなく、独自に設定した世界観と内部の空間構成に一貫性を持たせることである。
② 内容展開の方向性
A. 地球の内部を、水や空気、エネルギーが循環する巨大な生命維持装置として構想し、人間の生活と環境の関係を表現する。
B. 地球の内部に都市や公共空間を設け、異なる地域や人々が交流するための建築的な仕組みを提案する。
C. 宇宙船を一つの社会として捉え、外皮上の暮らしを支える人々や機構の存在を想像することで、普段は見えない社会のつながりを表現する。
③ 構成例
作品テーマ:「地球の内部に存在する、暮らしを循環させる都市」
地球の内部に、外皮上の人々の暮らしを支える巨大な都市空間が存在すると仮定する。
内部には、水やエネルギーを循環させる施設を設け、それらを立体的な通路や配管によって結びつける。また、中央には人々が集まり、異なる地域の情報や資源を交換する公共空間を配置する。
描画では、地球の断面を大きく示し、外皮上の生活空間と内部の施設がどのようにつながっているのかを表現する。施設の大小や配置、通路のつながりを工夫することで、宇宙船全体が一つの建築として機能していることを伝える。
④ 第2問・320字以内の記述例
私が構想した地球の内部には、外皮上の暮らしを支える巨大な循環都市が存在する。都市の中心には水やエネルギーを循環させる装置があり、そこから無数の通路が伸び、地表の街や建物につながっている。また、装置の周囲には人々が交流する公共空間を設けた。人間の生活は、一人ひとりが独立して成立しているのではなく、目には見えない無数のつながりによって支えられている。私は地球を宇宙船として描くことで、普段は意識されない社会の相互依存関係を可視化したいと考えた。
このように、作品で何を表現したいのかという中心的なテーマを設定し、描画と文章が互いを補完する構成にすることが重要です。
ただし、これはあくまで回答の一例です。実際の試験では発想の独自性が重要となるため、既存の建築物や施設を組み合わせるだけでなく、自分ならではの問題意識や世界観を空間として表現することが望ましいでしょう。
集団面接について
・面接の形式:集団面接
・面接官の人数:4人以上
・面接時間:約30分
実際にあった質問:
・なぜ早稲田大学を選んだのか
・これまでの実績について30秒で説明してください
・自分が今までに世に出した作品は何か
・自分だけが知っている好きな建築は何か
・留学を通じて学んだことは何か(語学以外)
集団面接では、志望理由やこれまでの制作活動、建築に対する関心、留学経験など、受験生自身の経験や価値観を問う質問が中心となりました。注目したいのは、「自分だけが知っている好きな建築」という質問です。著名な建築家の代表作について知識を披露するのではなく、身近な建築物に対してどのような価値を見出しているのかを問う質問だと考えられます。
建築学科の受験生としては、建物の形状やデザインだけでなく、そこで過ごす人々の行動や感情、空間が生み出す体験について、自分自身の言葉で説明することが重要です。また、実績を30秒という短い時間で説明する質問からは、活動内容を簡潔に整理し、その経験を通して何を学んだのかを伝える力も求められたと考えられます。
個別面接について
・面接の形式:個別面接
・面接官の人数:3人
・面接時間:約10分
実際にあった質問:
・誰がオイルタイマーを使うと考えたのか
・教育学ではなく、なぜ建築学なのか
・今までで最も頑張った経験は何か
・なぜ学校建築に興味を持ったのか
個別面接では、集団面接と比較して、受験生が取り組んできた活動や関心のある研究テーマについて、より具体的な質問が行われました。このような質問から、単に建築に興味があるというだけでなく、なぜその問題を建築によって解決したいのかという、志望分野への理解が重要だったと考えられます。
特に「教育学ではなく、なぜ建築学なのか」という質問は、建築を通じて実現したいことと、大学で学ぶ学問とのつながりを説明できるかを確かめるものです。例えば、学校教育に関心がある場合、教育制度や授業内容の改善だけでなく、教室の配置や廊下の設計、児童が交流する場所のあり方など、空間の設計によって学びの環境を変えられるという視点が考えられます。
また、受験生自身が制作したものについて、その利用者や目的を質問されている点にも注目したいところです。作品の完成度だけでなく、誰のために、どのような意図を持って設計したのかを説明できるようにしておくことが重要でしょう。
受験生が振り返る試験対策のポイント
今回の受験生は、筆記試験について「第二問で求められた『デッサンに関連する文章』を書くところに力を入れたら良かった」と振り返っています。また、過去問対策ではデッサンの練習に偏っていたため、もっと想像力を使う課題にも取り組んでおけばよかったと感じたそうです。
今回の筆記試験でも、与えられた対象を正確に描く技術だけでなく、存在しない空間を想像し、その構造や機能を視覚的に表現する力が求められました。さらに、320字以内の文章によって作品の意図を伝える必要があり、描画と文章の両方を練習しておくことが重要だといえます。
面接対策についても、受験生は「自分を全然知らない人と練習してみても良かった」と振り返っています。建築に対する独自の考えや制作活動については、普段から自分をよく知っている人には伝わっても、初対面の面接官には十分に伝わらない可能性があります。そのため、自分の活動を知らない相手にも背景や目的を説明できるようにしておくことが有効です。
早稲田大学創造理工学部建築学科のAO入試に向けては、デッサンの技術を磨くだけでなく、架空の課題に対して独自の発想を生み出す練習や、その発想を文章で説明する練習も欠かせません。
また、面接では、これまでの経験や作品、建築への関心を整理するとともに、「なぜ建築なのか」「建築によって何を実現したいのか」という問いに対して、自分自身の言葉で答えられるよう準備しておくとよいでしょう。





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