「楽して稼ぎたい。隣に座る同僚よりも、良い住まいを得たい。
かつて自分をバカにしてきた同級生よりも、物質的・精神的に豊かな暮らしがしたい」……衣食住がある程度足りた現代では、原義の生存競争ではなく、「いかに集団から抜きんでるか」を意識したレースが展開されているように見えます。

 その中で大きなファクターとなり得るのが「学歴」。特に生涯年収を大きく左右する大学受験においては、様々な偏差値をあげる方法やサービスが紹介されていますね。
ただ、受験勉強は向き不向きや生育環境に左右されるうえ、必死になって勉強をしても、試験当日の運に左右される不確定要素も大きい茨の道。

 「なるべく、確実に、楽をして、ちょっとでもいい大学に入りたい……」そう考えるのも、自然なことでしょう。
そこでお勧めできるのが指定校推薦。明らかに他の入試方式より数段ハードルが低いわりに、GMARCHや早慶など難関大学でも採用されています。

 さて、ここに偏差値60程度の学校に通うAさんがいます。成績はなかなかよく、高3春時点で早慶がC判定。1年頑張れば、それなりに戦えそうです。
一方で、内申点も優れており、いま立候補すれば、秋前には確実にGMARCHの上位学部への指定校切符を手に入れることもできます。

 では、仮にAさんが大学を「就職のための中間地点」とみなす時、「一般で早慶」か「指定校でGMARCH」か、どちらの道を選択すべきでしょうか?

学歴はカネになる

 東大受験をゴールから逆算して最低限のルートのみを突き進む異端の受験戦略でハックした『ドラゴン桜』では、「バカとブスこそ東大へ行け」というメッセージが印象深いとして語られました。

 バカじゃないなら、見た目がいいなら、周りから重宝されたり人から可愛がられたりするかもしれない。ですが、そのような先天的なアドバンテージがないならば、自分という存在そのものに後天的な付加価値をつけるしか、道はない。
だからこそ、「バカ」と「ブス」すなわち「弱者」の自覚があるのならば、自ら身を立てるために東大へ行くべき……一定の説得力があります。

 確かに学歴は金になります。大学卒の平均賃金は男性2億5千万円、女性は2億円(労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2024」)ですが、コンサルティング会社AFGの試算によれば、早稲田卒で3億8785万円、慶應卒で4億3983万円、東大卒では4億6126万円にまでのぼるそう。
18歳時点でのテストの成績が、平均より1億以上も稼ぎ出すファクターになる。だからこそ、誰しもが大学受験での成功を願い戦争に身を投じるのでしょう。

早慶とMARCHの差は約1億円

 ただし、あくまで大学は研究機関であり、就職予備校ではありません。頑張っていい大学に入っても、それは就活で有利にみられる可能性が上がるだけで、それ以上でもそれ以下でもない。「一流企業に入る」がゴールならば、大学受験はあくまで途上のハードルに過ぎず、ここに割く労力は少なければ少ないほど良いはず。

 そこで注目したいのが、指定校推薦。大学から指定を受けた高校に、ほぼ確定で入学できるイスがいくつか用意される制度であり、際立った障壁やテストがない分だけ、明らかに入学の難易度が低い道です。

 最近では入学後に備えて教材が送られてくるケースも多いようですが、入れるかもわからない受験勉強の時間がカットできるので、時間的・精神的に大きなアドバンテージを得られるのは間違いない。

 早慶では4億前後とみてきましたが、MARCHではどれくらい稼げるのでしょうか?

これは全くデータがないので完全な推計となりますが、日経転職版の公開する「大学年収調査2025年度版(https://career.nikkei.com/knowhow/income/003396/)」によれば、大体3億前後といったところになりそうです。

 なるほど、1億円近くも差が出てしまう。関東難関私大として「早慶上理」に名を連ねる「GMARCH」ですが、実際のところはなかなか厚い壁がありそうです。とはいえ、これだけで「一般受験の方が賢い!」とは言い切れません。

時給換算すると逆転

 一般に、早慶レベルの大学へ一般受験したいならば、3000時間程度の学習が必要といわれます。ですが、指定校でGMARCHに入れるならば、高校3年間の積み重ねを誤らなければ、局所的なドーピングの必要がなくなる。総合的には得かもしれません。

 日本の受験事情全般に詳しい「じゅそうけん」こと伊藤滉一郎氏は「指定校MARCHはあながち悪くない選択」と高く評価します。

「早慶に入りたいならば、文系の場合大体2~3年分の受験勉強と、1年程度の予備校通いが一般的には必要です。
予備校代が50~150万程度かかりますし、累計で2500時間程度の学習を積む必要もある。これは、平日は毎日3時間、土日は5時間の勉強を2年間欠かさず続けるに等しく、仮に1年間しかないなら毎日10時間程度学習する必要に迫られる修羅の道。

しかも、みなさんも覚えがあるかもしれませんが、勉強しても伸びない成績や、軽々と自分を追い抜いていく日本中から集うライバルたちの背中など、様々な要素によって情緒が不安定になるリスクもある。高校生活のほとんどを受験に捧げてようやく入れる学校ですが、最後は出題との相性もあり、運にも左右されるのが難しい。

 一方で、MARCHに指定校で入りたいならば、学校側の内申点や学業成績などを統合した成績表のトップクラスに入るだけでいい。もちろん甘くはありませんが、それでも一般受験よりは大分マシでしょう。学校によっては、高1や高2では定期テストを軽視する学生も少なくないので、それらを尻目に一定頑張れば、多少の努力で学年トップクラスに入れるはず。

 3学期制の学校で、各学期2回ずつ定期考査があるとすれば、高2終了までで実施されるテストは12回。仮に試験2週間前から毎日平日は3時間、休日は6時間ずつ勉強したとすれば、合計学習時間は650時間ほど。
高3の1学期や2学期まで含めても、900時間に満たず、しかも実際に頑張る期間はテスト前2週間だけですから、裏を返せば年間40週間は遊べるわけです。
それに、高3の秋には受験が終了しますから、そこから卒業までの3~4か月程度は実質ウイニングラン。学校の授業を適当にこなして不祥事さえ起こさなければ、あとはダラダラ過ごすのも自由です」

 仮に生涯年収を早慶卒で4億、MARCH卒で3億になるとしましょう。前述の通り、大卒の平均賃金は男性で2.5億、女性で2億ですから、それぞれのアップ幅を計算すると以下の表の通りになります。

 これだけ見れば早慶の圧勝。では、それぞれのアップ幅を勉強時間で割って、「勉強時間の実質時給」を換算してみましょう。
すると、以下のようになりました(MARCHの学習時間は800時間と仮定)。

なるほど、男性側は似たり寄ったりですが、女性側の上がり幅がえげつないことがわかります。少なくとも、男女ともに指定校MARCHの方が、絶対値はともかくとして、コスパ自体は高くなりそうです。

もちろん、算出に使った早慶・MARCHの生涯年収が男女別でないことや、データとして偏りがある可能性なども高く、鵜呑みにできるものではありません。
ただ、「指定校MARCH」が、むしろ賢い選択のように見えることも、念頭に置く必要があります。

さらに、伊藤氏によれば、ここからMARCHは更なる追い上げを図ることも可能だと断言します。

「就活で見られるのは、学歴だけではありません。いわゆる『ガクチカ』として学生時代の取り組みが見られたり、資格の有無や語学力が見られたり、様々なパラメータを多角的にチェックされます。
仮に早慶や東大京大に受かろうとも、学歴にあぐらをかいているだけでは、指定校組に抜かされる可能性も非常に高い。
逆を言えば、指定校でMARCHに入る人は、余った時間を使って就活などで役立つ様々な勉強をしておけば、後々の戦いでも早慶や国立の学生相手に有利に立ち回れます。

 たとえば、親が許すのであれば『半年から1年程度の留学』は非常にお勧めできます。語学力養成もさることながら、『異文化環境で自分のストレスをコントロールしながら、新たなコミュニティに居場所を作れた』経験自体が、とても評価されるからです。
大人になれば、就職・転職・出向・異動など、全く異なる環境に身を置く回数が格段に増えますが、そこで毎回うまくやって行けそうな人は、頼もしく映りますからね。


高校に留学制度がなくても、学事センターやキャリアセンターに行けば交換留学や短期研修を提案してくれるでしょう。中には、自力で留学エージェントと交渉して手配した人もいますから、やはり行動力が重要ですね。

あとは資格試験も鉄板。コツコツと勉強するのが好きなタイプなら、ある程度様々なビジネスシーンで活用できる資格を、高校大学在学中の取得を目指して学習を進めるのもお勧めです。
『簿記』『ITパスポート』『FP(ファイナンシャルプランナー)』『TOEIC』あたりがお勧めできますね。TOEICを就活で武器にしたいなら、800点以上を一つの目標に設定するといいでしょう。

また、高3になって合格が確定したなら、高3の冬に思い切って企業インターンへ募集するのもアリです。
『大学生がやるもの』とイメージされている方も多いでしょうが、職場体験でもアルバイトでもない”社会人の一員”として動く経験は、大きく自分を成長させてくれるはずです。実際に、インターンやった子とそうでない子は、ビジネスシーンにおける印象が大きく異なります」

本当の「賢い選択」とは

なぜかインターネット上で叩かれがちな「指定校推薦」。
確かに、「入学後の成績が悪い」とか「受験生の気持ちも考えずに高3の秋から遊びまわって気分が悪い」とか、様々な文句は出てくるかもしれません。

ですが、大学に入るためのドーピングであり、本来必要のない工程である「受験勉強」を一切人生から消し去って、実用的な学習や主体的な活動のために時間を割くことができる点は、一般入試を大きく上回るメリットとなります。
ネックとなるブランドの問題も、上述のように学歴ブランド以外のステージで箔をつければ、十分対抗できるようになる。

一般入試を頑張ってきた人の気持ちはわかります。
「俺たちの努力に見合っていない!」と感じるのでしょう。ただ、これは非常に的外れな、極めて自己中心的かつ幼稚な嫉妬心から来るやっかみにしか聞こえません。

確かに、努力そのものには価値があります。ただ、「頑張ったから!」で讃えてもらえるのは、子どものうちまで。大人は、頑張ったことそれ自体よりも、頑張ったことで得られる結果をもってして、他者を称賛するのではないでしょうか。

「楽をしたいから」だけで指定校推薦を取る人がいれば、愚かかもしれません。
とはいえ、それなら「愚か者」より先に行けばいいだけの話。そして、愚者が一時の安寧にあぐらをかいて堕落していく様をみればいい。
人のことばかり見ているから、自分が本当に見るべき目標を見誤ってしまうのではないですか。

社会に出れば、誰もあなたのことなんか気にしません。だからこそ、あなたの未来くらいは、あなた自身が常にまっすぐ見つめてあげるべきでしょう。
そうした意味で、途中の道筋だけではなく、ゴールのみをまっすぐに求め続ける「指定校推薦」は、賢いやり方の一つだといえるのかもしれません。